名古屋大学 高等教育研究センター

第34回客員教授セミナー 研究大学における
ティーチングアシスタントの役割
小笠原 正明 氏 東京農工大学大学教育センター
北海道大学名誉教授
2006年 9月28日(木)午後4時〜午後6時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨


 わが国の大規模な研究大学では、90年代の後半から大学院学生の多くがティーチングアシスタント(TA)として採用されるようになった。採用数が1000〜2000人、予算規模が1〜2億円に達している大学も少なくない。しかし導入の際の制度設計が不十分で、教育システムにおける位置づけ、待遇、研修、評価などをあいまいにしたままに人数を増やしていったため、さまざまな矛盾が目につく。TA制度は研究大学を成り立たせるための条件の一つであり、また大学院学生の経済支援としても重要なので、その呼称も含めて制度の根本的な見直しが必要である。

 北海道大学の高等教育機能開発総合センターは、1990年代の後半から学士課程教育の再構築のため教養教育および基礎教育カリキュラムの再編を進めてきたが、その過程でTAが果たす役割の重要性に気づき、1998年から組織的なTA研修を開始した。現在では、全学レベルでは9つの分科会を持つ数百人規模の研修に成長し、個々の学部のTA研修も定着しつつある。また、近年、物理や化学など理系基礎科目の授業開発に関係して、カリフォルニア大学バークレー校と提携して、学士課程前半の教育にTAを組織的・効果的に取り込む方法や、その人材育成法について実践的な研究を行ってきた(詳細は「TA実践ガイドブック」(玉川大学出版部)参照)。


 多様化した大学入学者の学力に対応しつつ、研究大学としての機能を維持するためには、これまで以上に教育の組織化を進める必要がある。これまで個人の努力に委ねられてきた授業のあり方を組織的に見直し、内容の標準化と同時にクオリティーや教育効果の向上につとめたい。大規模授業に対しては、物的資源としてオンデマンドビデオなどのITインフラ、クリッカーシステム(赤外線によるクイズの投票技術)、また人的資源としてTA等の重点的な配分を行うことが望ましい。TAの職務を整理して、必要に応じて上級TA、中級TAのように階層化することもあり得る。大学院における教育研修に対しては、大学教員の後継者養成としてだけではなく、企業における研修やコミュニケーション向上の面からも社会的な要請が強まっている。TAの業務をオンザジョッブトレーニングとして位置づける、新しい大学院教育科目の開発とその単位化を考える時期に来ている。

■ 開催案内

第34回客員教授セミナー
研究大学におけるティーチングアシスタントの役割

小笠原 正明 氏
(東京農工大学大学教育センター)

日時:2006年 9月28日 (木) 午後4時〜午後6時
場所:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

講演概要
 ティーチングアシスタントは、わが国の大学の一つの盲点になっている。大規模な研究大学では、90年代の後半から無視できない数の大学院学生がティーチングアシスタントとして採用されるようになったが、導入に際して制度設計が十分になされなかったために、教育システムにおける位置づけ、待遇、研修、評価などがあいまいなままに推移している。ティーチングアシスタントは、現在では研究大学を成り立たせるための重要な柱になりつつある。またその導入に際しては「教育の組織化」が必要なことから、必然的に教育の戦略や方法の変化を引き起こしつつある。この講演では、カリフォルニア大学バークレー校の事例を紹介するとともに、わが国におけるティーチングアシスタントの動向や、実践的なティーチングアシスタントの訓練法や講義科目への導入の方法について説明する。

言語:日本語

お問い合わせ: 夏目 <natsume@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)

※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までにseminar@cshe.nagoya-u.ac.jp宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。)セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。

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