名古屋大学 高等教育研究センター

第71回招聘セミナー 教務部門における職員の資質とその向上 上西 浩司 氏 豊橋技術科学大学 研究協力課 2008年6月30日(月) 16時00分〜 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

■ 講演要旨

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 近年,大学における事務職員への期待は高く,理事長,学長を中心としたトップマネジメントを支援する事務職員像など種々提言されている。それでは,大学の教育の運営事務を担う教務部門はどうだろうか。なかなか具体的な職員像が提示されるまでに至っていないのが現状ではないだろうか。それは,教務部門は大学の教育に直接関わる部門であり,教育に従事する教員に対して教務部門の事務職員(以下「教務担当職員」)をどのように位置づけるかという問題があるためと思われる。教員との役割分担を明らかにし,教務担当職員の実状を踏まえた提言が必要なのである。このため,2007年に名古屋大学高等教育研究センター大学職員研究会により実施された教務担当職員の専門性に関する意識調査を分析し,教務担当職員の資質とその向上についての課題を考える。

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 当該調査は,全国国公私立大学の教務部門の事務責任者を対象として教員との役割分担及び教務担当職員の専門性に焦点をあてた質問紙調査により実施された。調査結果は次のようにまとめられる。

教務部門における教員との役割分担

  • 教務委員会に関する調査結果では教務部門の管理運営において教務担当職員が主導的な位置を占めているかは明らかにならなかったが,多くの大学において正規な立場で参画していることがわかった。
  • 教務委員会における教員との役割分担は各大学で異なっていると思われた。しかし,企画的な審議事項原案の作成についてかなりの大学で教員職員協働が行われていた。

教務担当職員は専門性をどのように捉えているのか

  • 教務担当職員に必要な処遇・資格・能力等に対する回答結果からは,教務事務責任者が教務担当職員の専門性をどこまで積極的に意識しているかは判然としなかった。
  • 人事異動の範囲は教務部門内に限らないとする大学がほとんどであった。
  • 人事異動がある場合で教務部門に継続して従事する年数は国公立大学では4年までで9割を超えた。一方私立大学では5年が多く,5年までで6割強だったが,6年以上の割合も3割程度あった。
  • 教務部門の管理職登用において,学内の教務担当職員出身者がなる割合はあまり高くなかった。
  • 人事異動のメリット,デメリットに関する意見から全学的に人事異動をする私立大学においては,教務部門の継続従事年数が5年以内では「専門性が身につかない」という割合が高く,6年以上では反対に「専門性が身につく」という割合が高かった。ここでの「専門性が身につく(身につかない)」という回答における「専門性」とは比較的長期間同じ業務に従事するという共通の特徴を持っている項目群であることがわかった。
  • 教務担当職員の能力・知識等を高めるための方策として各種の研修が考えられるが,学外研修は6割弱の高い割合で実施されていたが,大学職員を対象とした大学院への派遣は学内研修とともに2割弱であった。

 調査結果の分析から教務担当職員の資質の向上について次の課題を提示したい。

 第一は専門性についてである。教務担当職員が必ずしも教務事務責任者に登用されていない現状において,教務担当職員は高度な専門性が必要であるということを教務事務責任者に意識させる方策が必要である。

 第二に教務部門の運営における教員との役割分担である。教務部門における教務担当職員の役割を明確にすることは専門性確立の鍵である。教務部門における教務担当職員の役割について多面的なアプローチによる研究が必要である。

 第三は人事異動についてである。全学的で短期間の人事異動と教務担当職員の専門性の確立との関係の研究は今後必要な課題である。

■ 開催案内

第71回招聘セミナー

講演題目:教務部門における職員の資質とその向上

上西 浩司 氏 (豊橋技術科学大学 研究協力課)
日時: 2008年6月30日(月) 16時00分〜
場所: 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

講演概要

 全国の国公私立大学を対象に教務部門の職員に期待される役割に関する調査の中から,教務部門の職員の専門性に関する意識調査の結果を発表する。この調査では当該職員についての学内関係委員会への関わり方,人事異動,専門性に対する意識等についてたずねた。この結果に基づき今日の大学教育改革において事務職員の専門性の確立は重要なテーマとなっている中で大学教育に直接関わる教務部門の職員は自身の専門性をどのように考えているのか。また,それはどこに起因するのかをさぐる。最後に当該職員の専門性の確立に必要な方策について展望したい。

お問い合わせ:中井俊樹 <info@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5696)

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