名古屋大学 高等教育研究センター

第94回招聘セミナー 美術館から見た大学における美術教育について 山田 諭 氏 名古屋市美術館学芸員 2010年12月15日(水)17:00〜19:00 東山キャンパス 文学研究科128講義室

■ 講演要旨

美術館にとって、大学における美術教育の意義は大きい。美術館が充分な機能を果たすためには、社会、特に行政の理解が不可欠であるが、日本においては社会的な位置づけが確立できていない。そこで、大学における美術教育が重要となる。

美術館には、展示・公開、教育・普及、収集・保存、調査・研究の4つの機能があるが、一般的な理解はいまだに「展覧会を見に行くところ」という段階に留まっている。これは美術館を現在のためのものとしか見ないことである。行政が経費を削減するとき、最初に収集のための予算を削減する。しかしながら、将来のために名古屋の近現代美術を収集・保存することは名古屋市美術館にとって本来最も重要な仕事であるはずである。作品という財産を所蔵することともなり、コレクションは集まることで価値が生まれる。さらに、作品を収集・保存することで、特別展などの開催も円滑に進めることができる。特別展は美術館同士で作品を貸し借りして行う。互いに貸し借りするものであるという前提があるため、無償で行う。ただし、動かすことで作品がダメージを受けるため、美術館は良い作品を所蔵していない美術館には貸したがらない。

このような美術館の活動に対する理解を広めるため、大学における美術教育が重要となる。しかしながら、大学において美術館がどういう場所かを考える機会は少ない。博物館学の授業は開講されているが、学芸員になるための授業であり、一般の利用者の視点から美術館について考える機会にはなりにくい。

現在名古屋市美術館では、ボランティアによるギャラリートークを行っている。ギャラリートークでは一方的に解説するのではなく、作品を見て考えたことを来館者に話し合ってもらう。解説を聞いてから見ることは自分の目で見ないこととなってしまうからだ。何が描いてあるか発見すること、描かれているものを言葉に置き換えることなど、自分の目で見るという体験を繰り返しながら美術鑑賞は育つ。美術鑑賞には、美術の知識ではなく、高校生や大学生の頃に身につきはじめる一般的な教養が必要である。さらに、美術作品は一度見ただけでは分からないものであり、人生の様々な体験を経ることによって見え方が変わる。美術鑑賞の入り口となる高校生、大学生の頃に見る楽しみを知ることが重要である。

■ 開催案内

第94回招聘セミナー

講演題目
美術館から見た大学における美術教育について
講演者
山田 諭 氏
(名古屋市美術館学芸員)
日時
2010年12月15日(水)17:00〜19:00
場所
東山キャンパス 文学研究科128講義室

講演概要

日本に公立の美術館が誕生してから約60年を経て、現在では、全国各地に300館以上の公立・私立の美術館が開設され、多様な活動を展開している。しかし、美術館についての一般的な理解は、いまだに「展覧会を見に行くところ」という段階に留まっているために、文化機関としての美術館の社会的な位置付けが確立していない。 このような現状において、美術館(学芸員)の立場から、大学における美術教育の意義や内容について考えたい。

お問合せ先
西原 志保
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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