名古屋大学 高等教育研究センター

第79回客員教授セミナー 中国における大学生の学習行動と大学の学習支援 竇 心浩 氏 上海外国語大学日本文化経済学院・副教授 2016年3月10日(木)15:00〜17:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ

■ 開催案内

第79回客員教授セミナー

講演題目
中国における大学生の学習行動と大学の学習支援
講演者
竇 心浩 氏
(上海外国語大学日本文化経済学院・副教授)
日時
2016年3月10日(木)15:00〜17:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ

講演概要

中国では、高等教育が大衆化時代を迎えており、学生の学力低下がしばしば指摘されている。政府は学生の学習支援方策を実施しているが、それらは主に成績のよい学生の学業を促進することに主眼があり、学業不振の学生の支援には必ずしもつながっていない。

本セミナーでは、政府の学業支援方策の内容と特徴を検討する。また、学生の多様な学習行動に対応する学習支援システムの構築をめぐる動向を紹介する。


■ 講演要旨

1990年代中頃以来、中国の高等教育は速いスピードで拡大しつつある。高等教育進学率は1992年の3.9%から2015年の40%まで上昇し、大学入学者数も75万(1992年)人から700万人(2015年)に増えた。こうしたドラスティックな量的拡大の下、大学生の質的変化も現れている。学力の低下、入学目的の多様化など学生側の問題が目立ち、大学側が対応に苦慮している。一方、中国社会は世界規模の情報化とグローバル化の流れに巻き込まれ、より高度な知識と技能を身につけた人材の育成を大学に求めている。それゆえ、高等教育の大衆化時代において、高等教育の質保証が中国政府と大学の直面する最重要課題の一つとなっている。

2015年10月から11月にかけて上海に立地する四大学で行った調査では、大学生の学習活動におけるいくつかの問題が明らかになった。学生全体を見れば、平均授業時間(週26.5時間)に比べ、授業外の自律的学習時間(週16.5時間)は非常に少ない。特に、学業達成度の低い学生ほど自律的学習時間が少ない。また、学生の学習意識にも分化現象が目立つ。35%の学生は授業内容が役に立たないと思い、授業内容が役に立つ思う者でも勉強の具体的目的が分からない学生も25.8%に及んでいる。これらの学生は比較的勉強時間が短く、学業達成度も低い。高等教育の質を保証するために、大学側は大学生の学習活動に関与して、学習支援を積極的に行うことが必要になっている。

近年、中国政府は高等教育の質的向上を重要視して、指導教員制度の導入、モデル授業の充実、学生研究プロジェクトの展開など、多様な学習支援策を講じている。これらは「適応能力確保」、「専門知識習得」、「応用能力向上」という三つの狙いがあると見られるが、政府が力を入れているのは専門知識習得と応用能力向上であり、特に後者への重視が顕著である。

一方、大多数の学生は学習支援の必要を感じているが、新入生向けの導入教育を除き、指導員や指導教員の指導、授業ホームページなど多くの支援措置に関しては、あまり評価していない。学業達成度の高い学生ほど諸種の支援をよく利用していることも分かった。さらに、学生の求める支援には学年による差異がある。中国型学習支援は、学業達成度の高い学生の能力の伸長を重視する一方、低い学生への支援には重点を置かない。そのため、学生の二極分化に拍車をかけている。

以上のように、高等教育の質保証に関連する政府の諸措置と教育現場の実態と間に、明らかにミスマッチが存在している。政府は資源の投入と教育機能の強化によって、高等教育の質を向上を目指しているが、学習支援の主な担い手である教員の多くは負担増を危惧して、支援活動に消極的である。一方、大学院生や学生には、自らの能力を生かしたピアサポートが期待されるが、実際にはあまり行われていない。また、ほとんどの大学では、学習支援センターのような専門的組織がなく、大学内部で学習支援の企画、調整、評価などを行うことは難い。そのため、学習支援の効果を保証できない。こうした問題を解決するには、大衆化高等教育に対する正確な認識と、学習支援に関するグランドデザインをもつことが不可欠である。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。 会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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