名古屋大学 高等教育研究センター

第145回招聘セミナー 理数探究科目に対応できる教員を
養成するための演示実験とその開発
伊東 正人 氏 愛知教育大学理科教育講座・教授 2018年1月9日(火)13:00~15:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 開催案内

第145回招聘セミナー

講演題目
理数探究科目に対応できる教員を養成するための演示実験とその開発
講演者
伊東 正人 氏
(愛知教育大学理科教育講座・教授)
日時
2018年1月9日(火)13:00~15:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

講演概要

次期学習指導要領(高等学校)では、理科と数学を統合した探究科目「理数探究」が導入される予定である。教員を輩出する教育学部において、数理的な探究授業に対応できる理系教員を養成しなければならない。

講演者は、物理現象の背後に潜む数理的構造を見抜く力を身に付けさせるために、講義中での演示実験を実践している。本講演では、実践している演示実験装置とその演示方法・解析方法を紹介する。


セミナー企画 ⇨ 物理学講義実験研究会 http://physicsdemo.org


■ 講演要旨

次期学習指導要領の改訂において、高等学校教育に理科と数学を総合的に活用し探究活動する科目「理数探究」が2022年度に実施予定である。今後、理数系高校教員はその探究科目に対応するために、更なるスキルアップが求められる。現行の高等学校教育において、専門性の高い科目(特に物理学)になるほど座学中心の授業となり、教育学部に入学する理系学生のほとんどは探究活動を体験したことがない。このような現状を鑑み、理科特に物理学と数学を統合した理数探究科目を実践・指導できる教員を養成するために、講演者は大学授業で実施する演示実験の開発を行っている。物理現象の背後にある数理的構造を見出す方法、それを演示する実験装置の開発、その現象の解析方法といった一連のプロセスを、演示実験を通じて学生たちに体感してもらうことが目的である。

数理物理に基づいた物理実験は、目の前で起きる演示実験として活用する例は非常に少ない。数学の知識を前提にしないと理解できない実験となるので、演示実験に相応しい物理現象を選定することが困難だからである。講演者は、大学での物理数学の知識を前提とした演示実験を開発したので、各実験に対応する数理的要素を以下に紹介する。

① サイクロイド坂道の演示実験⇒物体運動の解析における微分・積分の必要性

② 倒立振り子の演示実験⇒有効ポテンシャルから力学挙動を解析する方法

③ 低速回転する鉛直にぶら下がった鎖の形状⇒鎖の節点位置とベッセル関数零点の対応

④ 水平軸回りを高速回転する鎖の形状⇒ヤコビのsn楕円関数の理解

⑤ 両端が固定されてぶら下がる鎖の形状⇒カテナリー曲線の理解

初年次の理系学生にとって微分積分は、“微分=接線の傾き”、“積分=面積”という受験数学の呪縛が強すぎるため、物理学に微分積分が登場することに大きな抵抗感を感じるようである。①はサイクロイド曲線の最速性と等時性という特有の性質を演示実験で体験し、微積分を使った理論計算を通じて現象を理解するものである。②は有効ポテンシャルによる力学運動の挙動の理論的解析と、実際の現象がどのように対応しているかを理解するための演示実験である。③~⑤は、鎖の各部分の張力が一定ではない場合の鎖の形状がどのように決定するかを理論的に解析し、その現象と照合することによって、鎖の物理の背後には特殊関数(ベッセル関数とヤコビの楕円関数)が潜んでいることを理解する演示実験である。

上の5つの演示実験は、高等学校物理で実践できるものでない。あくまで物理を専門とする理系大学生に対して行った演示実験例である。数理的要素を含む現象の選定方法、物理現象から数理的構造を暴き出す解析方法、演示実験装置の開発方法を、授業を通じて学生たちが体感し、それを将来の学校現場の「理数探究」で実践してほしいものである。現在、「理数探究」科目の導入について、枠組みは決まっていてもその中身の詳細が決まっていないようである。4年後、現場の高校教員が戸惑わないためにも早急に中身を決めて欲しい。

申し込み方法
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お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。
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