名古屋大学 高等教育研究センター

第165回招聘セミナー 線形代数における反転授業の試み
〜課題と展望〜
吉冨 賢太郎 氏 大阪府立大学 高等教育推進部門・准教授 2019年3月4日(月)15:00−17:00 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ

■ 開催案内

第165回招聘セミナー

講演題目
線形代数における反転授業の試み
〜課題と展望〜
講演者
吉冨 賢太郎 氏
(大阪府立大学 高等教育推進部門・准教授)
日時
2019年3月4日(月)15:00−17:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ

講演概要

大学数学においても反転授業(学習)は徐々に広がりつつある。しかし、STEM教育に必須の線形代数はまだ実践事例が少ない。

講演者は 2014 年より動画の開発を始め、完全な反転形式には至っていないものの動画教材やオンライン課題を活用し、対面授業では、時にグループ活動を含め試行してきた。線形代数における反転授業の今後の課題と展望、教材開発におけるポイントやノウハウについて紹介する。

■ 講演要旨

学生の質保証や STEM教育の重要性が叫ばれる中で、大学における線形代数や微積分学の授業改善が求められている。本セミナーでは特に線形代数における反転授業について、教材作りの方法や留意点について具体例を交えながら検討した。反転授業・反転学習におけるポイントは予習教材の整備・運用と対面授業設計にあると言える。一般的には、動画が予習教材として用いられ、計算問題のように例題解説を視聴して、同じように家で問題を解いてくるというスタイルが考えられる。微積分学においては、比較的そのようなスタイルにあてはまりやすいと考えられ、海外を始め、国内でも徐々に実践例が聞かれるようになってきている。また、対面授業については、グループ学習によって話し合いによる発展的学習をすることにより、より高度な理解が得られる、というのが反転授業の特徴である。

一方で、昨今は課題を学生に与えすぎるという話も聞かれる。それにより、学生が自由に考える時間が阻害され、課題をこなすことだけに専念してしまっている可能性も指摘されている。授業時間外学習は単位数に応じて一定時間以上の確保が求められるが、場合によってはそれを上まわる課題が与えられ、学習者の負担になっている可能性もある。

また、線形代数の課題として、指導要領の退化により空間における平面の方程式や行列を高校で学べなくなってしまった学生にとって、新しい概念が多数登場し、微積分学よりつまずき易いという点がある。抽象的な議論も多く、旧来型の講義で行われてきたような知識伝達型の教授内容をそのまま動画にしたのでは、準備学習教材として理解困難な可能性が高い。また、対面授業において、認知的負荷の高い内容を演習形式で行っても、単に作業になってしまい理解が伴っていないこともある。これは例えば寝てしまうような学生が相当数いることからも推察される。

このような問題点に対し、鍵となるのは「問い掛け」であると考える。学生がほぼ寝ることのない授業形式として、ペア演習やスマホ/PC活用による授業内オンライン課題の取り組みがある。このことをヒントにすると、問い掛けに答え、フィードバックを受けたりペア相手に説明したりする学習方法は効果的であると考えられる。特に、ICT(オンライン課題)の活用は、予習・復習・対面授業のいずれにおいても、計算技能習得だけではなく、用語の定着化、概念理解の深化、証明の具体例による理解を促進することに効果が期待できる。その際、ポイントを細かくしぼることで学生のつまずきを広くカバーできるが、課題数も増大するため、特に予習活動においては、形式としては多肢選択式のように解答入力が平易であるが、しかし理解しなければ正解できない内容の問題を中心にすることが肝要である。さらに、比較的自学自習で取り組み易いテーマにしぼり、理解困難な点は動画を活用すればよい。動画は教科書やスライドでわかるところは結局飛ばし見しているという点を考慮すれば、このような問い掛け先行型の教材運用が自習教材の効率性と負担軽減の両観点からも有効と考えられる。

これまでに反転用の動画を多く開発し、LMS上のオンライン課題も学習内容をほぼすべて網羅できるよう開発してきたが、学生の声や取り組み状況から上記のように改善すべきポイントが明確になってきたと感じている。

セミナーでは、このような状況を解説し、線形代数における反転授業における教材開発と対面授業設計ついて効果的と考えるスタイルを提案した。また、教材開発のデモを行い、反転授業を検討している参加者にヒントと助力となるように努めた。

なお、スライド・動画は http://www.las.osakafu-u.ac.jp/~yositomi/ のリンク先に掲載してあり、現在公開中の Moodle用問題集(XMLファイル)もリンクする予定である。これらの動画やスライド、問題は自由に改変活用してもらって構わない。ただし、スライドについては、活用してできた動画教材は公開し、他の国内外の教員も自由に使えるようにしていただくことを条件としたい。また、問題についても間違い等気付いた点があれば御一報いただければ幸いである。

申し込み方法
 本セミナーへのご参加を希望される方はセミナー参加申込フォームから必要事項をご入力下さい。その際にご入力頂いたメールアドレスへの返信をもちまして、申込完了となります。
お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-3534
(セミナー専用)
本セミナーに関する質問事項等があれば、上記のお問い合わせ先まで連絡をお願いいたします。
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