名古屋大学 高等教育研究センター

第51回招聘セミナー Empowerment Evaluation A Tool to Improve University Education and Accountability 評価疲れをしない、みんなを元気にする評価手法の紹介 −大学教育改善のためのエンパワメント評価− デービッド・フェッターマン 氏 スタンフォード大学医学部/教育学部教授 2005年6月21日(火) 午後3時- 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階カンファレンスホール

■ 講演要旨

 本セミナーでは、講演者のデービッド・フェッターマン教授が開発された「エンパワメント評価」が、実際にどのようなプロセスを踏んで実施されるのかが示された。

 エンパワメント評価とは、「当事者が『自己決定能力』を身につけるプロセスを提供し、変革を支援するもの」として活用されている。

 まず、エンパワメント評価を実施するうえで、以下の3つのステップが重要となる。

  1. ミッションの確立
  2. 現状把握
  3. 将来のための計画の策定

1. ミッションの確立

 当事者(参加者)のあいだで活動内容のミッションを確立する。すでにミッションが策定されている場合でも、当事者によって解釈が異なっていたりするので、改めて相互理解しあうことも重要となる。このステップは、当事者による変革への意識化を促進するためにある。

2. 現状把握

 次に、重要な活動内容と思われるものをリストアップし、優先度の高いものを選択する。けれども、優先度の順位はあまり重要ではない。あくまでも当事者の総意として、合意した活動群を選ぶ。たとえば、大学教育で主要な活動内容を、

  • コミュニケーション
  • 教育
  • 研究と挙げたとき、当事者それぞれ優先順位が高い

と思ったものに、以下のように表に○をつけてゆく

活動内容 優先順位に○をつける
コミュニケーション ○○○○
教育 ○○○○○○○
研究 ○○○

 さらに、活動内容に当事者それぞれが、10点満点で評点をつける。しかし、この目的は、評点を正確につけることが目的ではない。重要なのは、評点をつけるプロセスにおける対話(dialogue)なのである。

 対話によって、当事者間のコミュニケーションの促進がはかられるのである。

活動内容 Aさん Bさん Cさん 平均値
コミュニケーション 4 5 3 4
教育 10 8 4 7.3
研究 5 10 10 8.3
平均 6.3 7.6 5.6 6.5

3. 将来のための計画の策定

 現状を踏まえ、どのように活動内容を実施していくかを当事者に問うプロセスである。当事者は前段階で選択した活動内容ごとに目標や具体的な戦略を考えていく。

 つまり、エンパワメント評価は、対話を重視しながら、(1)現状を把握し、(2)将来のための計画を策定していく、といった「プロセス」そのものであるといえる。

 日本の大学に押し寄せてきつつある評価の大波も、このように、大学構成員(参加者)の対話を重視したプロセスのうえで、評価が実施されるのであれば、「評価疲れ」で終わってしまうようなことはないのかもしれない。