名古屋大学 高等教育研究センター

第45回招聘セミナー 科研費採択研究課題数による
大学の研究活性度について
野村 浩康 氏 東京電機大学教授・元名古屋大学副総長 2004年 12月3日(金) 午後2時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 本セミナーでは、国立情報学研究所NIIテクニカルレポートとして公表された「科学研究費補助金採択研究課題数による大学の研究活性度の調査研究」のデータに基づいて、1)科研費の全貌、ならびに2)旧7帝大の研究活性度の比較することから名古屋大学の位置づけが論じられた。

 1)科研費の全貌に関しては、次のような視点で論じられた。 科学研究費補助金項目別選択件数の割合(1998〜2002年度)を見てみると、大型研究費が38%、個別課題研究費が60%、研究成果公開促進費が2%となっている。

 各大学の科学研究費補助金研究課題採択件数は各大学に所属しているRAS(Research Active Staff)の数と見ることが出来る。科研費採択件数が多い大学はRASの数が多い大学と見ることが出来る。大学別に科研費採択研究課題数をみてみると、圧倒的多数の東京大学を皮切りに旧帝大グループが続き、旧制の官立学校(広島、神戸など)の順になっている。分科別採択研究課題数では、医学が圧倒的に多い。特別研究員奨励費の分野をみると、法学は東大の寡占である。

 次に、科研費採択件数別順位をみると、大阪大学を除く旧帝大が1位から6位を占め、7位に広島大学、8位に筑波大学、9位に神戸大学、10位に岡山大学、そして大阪大学が11位であった(大阪大学が11位であったのは、農学部がないからであろう)。また、COEと科研費については、科研費の順位とCOEの獲得件数にはある程度の相関がある。

 2)旧7帝大の研究活性度の比較することから名古屋大学の位置づけについては、教員一人当りの指標に翻訳しての比較が試みられた。「年平均科研費採択研究課題数・配分金額・発表論文数・学生数および教員数等一覧」のデータから、教員1人当りの運営費交付金額、科研費の採択研究課題数等が表にまとめて示された。

 教員1人当たりの運営費交付金額、学生1人当たりの運営費交付金額、教員1人当たりの科研費採択研究課題数においては、いずれも名古屋大学は旧7帝大中、7位であるが、科研費採択研究課題1件当たりの発表論文数においては、東京大学に次いで2位であり、研究の質の高さが示されているといえよう。

 また、運営交付金についていえば、「運営交付金と学生数との関連」も注目に値する。実は、学部生が多いほど、運営交付金が多いのでは?という仮説が存在する。この点からいえば、今後名古屋大学は学部生の定員について考える必要があろう。加えて、科研費以外の外部資金の獲得状況についても論じられたが、名古屋大学は旧7帝大中最下位であった。ちなみに大阪大学が多くの外部資金を獲得している。外部資金の獲得に関しては、今後産学連携の観点からも重要な側面となるであろう。

 本セミナーで論じられた研究は、公表されている生データを活用したことが注目に値する。今後は、このようなデータをどのような尺度を用いて、いかに計測・分析するかが課題となろう。