名古屋大学 高等教育研究センター

第27回招聘セミナー アメリカ・プロフェッショナルスクールの特質 大学職員養成プログラムの実態から 小川 佳万 氏 東北大学大学院教育学研究科 助教授 2003年 3月10日(月) 午後1時30分 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館5階 センター会議室

■ 講演要旨

 本発表の目的は、アメリカのプロフェッショナルスクールにはどのような特質がある のかという問題について、教育大学院の大学職員養成プログラムを対象にして明らか にすることである。

 アメリカの大学院は、大きく、文理(学術)大学院とプロフェッショナルスクールに 分けられるが、学位授与件数でみた場合、毎年85%がプロフェッショナルスクールか ら授与されている。したがって、アメリカの大学院の巨大さは、プロフェッショナル スクールの巨大さによると言える。

 そのプロフェッショナルスクールの特質としては、研究者養成を主たる目的にせず、 職業とのマッチング、つまりプロフェッナルの養成に重点をおいていることが挙げら れる。例えば、学位授与件数でみた場合に最大規模をほこる教育大学院の場合、プロ フェッションとして大きく3系統、教員系統、アドミニストレーター系統、カウンセ ラー系統に分けられる。そして学科・専攻(プログラム)の構成は、日本の小講座名 のようなDiscipline別ではないこと、特定の職業(群)を連想できるプログラム名に なっていること、しかも、ニーズに応じて小規模の改組が頻繁に起っていることも重 要な点である。特に、高等教育行政プログラムは、30年ぐらい前から増加してきた が、これは巨大化する大学に歩調をあわせて、それに対応できるアドミニストレー ターが必要になってきたからであった。

 また、プログラムごとに修得すべき知識がある程度明確であることも重要な特質であ る。必要とされる知識・技術が明確であれば、各々の学生がきちんと修得できている かどうか、中間・期末試験等ではかることが可能であるし、課程修了認定のための総 合試験の実施も可能になる。また、シラバスは、教官の学生に対する「契約」である だけでなく、教官同士の相互チェックにもなり、プログラムの体系化や透明性に重要 な働きをすることになる。こうした点は、「大衆化」した日本の大学院教育への今後 の参考となろう。