名古屋大学 高等教育研究センター

第48回招聘セミナー 大学間FDネットワーク活動の現状と課題 ―FDネットワーク中四国の活動を中心に― 佐藤 浩章 氏 愛媛大学 教育・学生支援機構 教育開発センター講師 2005年3月11日(金) 午後2時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階オープンホール

■ 講演要旨

 「FDネットワーク中四国」は、主に中四国地区の国立大学が中心となり、 FDプログラムの共同実施、教材の共同開発などを目的に連携している。 2003年に誕生し、年に二回の会合、MLでの情報交換、FDの講師交換などを行っている。 愛媛大学教育開発センター教育開発部が事務局となっている。

 最近は山形や京都でもFDをネットワーク化する動きがある。なぜFDネットワークが必要なのだろうか?

 第一の理由は「限られた高等教育センターの人的資源」である。 多くのセンターでは、任期制で異なる専門領域の研究者である兼任の管理職、 複数の業務を兼ねる1、2名の専任教員というスタッフの中で、大学の全教員のFDを担当している。 ネットワーク化により、FDを共同で企画・実施することが可能な人材バンクが誕生する。 これは従来の学会とは異なる性格を持つものでなければならない。

 第二の理由は「FD担当者のFDの必要性」である。 現在、FD担当者の能力開発はどこで行われているのだろうか。 この問いに答えるためにはFD担当者は何者なのかという問いに答えなければならない。 私は、FD担当者はコンサルタントであるべきだと考える。 米国の高等教育センタースタッフの自己認識がこれであった。 ならば、コンサルタントに不可欠とされる豊富なケースを収集する場が必要である。 こうして高等教育コンサルタントという専門職を確立することで、社会的認知を高め、 センタースタッフを増加させていく必要がある。

 第三の理由は「教授能力・プログラムの標準化の必要性」である。 ネットワーク化によるFDプログラムの共有・標準化による効果としては、 プログラム実施・教材作成面でのコスト削減効果、講師交換・異質な参加者同士の交流による教育効果、 FDプログラムの権威向上、プログラム修了認定の広域化による重複受講問題の解消、 全国レベルでの資格化による教員の教授能力の底上げなどがある。 またFDプログラムの効果測定をする上でも、教授能力・プログラムの標準化は欠かせない。

 成功するFDネットワーク運営のコツとしては下記が考えられる。

  1. 中心となる人物の確保:事務局として動く機動力のある、近隣の大学からなる3名程度の中心人物が必要である。
  2. 大学トップの理解:予算や場所の確保という点、活動を公にするという点から、大学トップ層の理解が不可欠である。
  3. 予算の確保:学長裁量経費、特色GP・現代GPなどの予算の確保が必要である。
  4. 構成メンバーの特定:ニーズの一致した構成メンバーが集まる必要がある。「地域凝集性」と「学生層の同質性」を両方とも高くした方がメンバー間でのコンセンサスを得やすい。
  5. 開催場所の確保:事務局会議の開催場所は、どのメンバーからもアクセスの良い場所が望ましいが、研究発表会・ワークショップを開催するのであれば、会場は持ち回りが望ましい。
  6. 情報交換の強化:日常的に会わないメンバーが多いので、MLやWEBを活用し、インターネット上での交流を密にする必要がある。WEBの充実は不可欠である。