名古屋大学 高等教育研究センター

第29回招聘セミナー 受講生として見た
アメリカのビジネススクールの教授法
佐藤 智恵 氏 株式会社ボストン・コンサルティング・グループ/米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了 2003年 5月16日(金) 午前3時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール

■ 講演要旨

 「アイビーリーグ」、「ニューヨーク中心地」という圧倒的な好条件を兼ね備え、全米および世界各国の多様な学生を惹きつけてやまないコロンビア大学経営大学院(ビジネススクール)。そこで展開されていたエキサイティングな授業のもようを、受講生の視点で振り返りながら「理想的な教授法」について述べ、日本の大学が参考にすべき点を考えてみたい。

 1コマあたり約2万円に換算されるコロンビア・ビジネススクールの授業料は、学生にシビアなコスト感覚を植え付け、教授に対する評価の目を厳しくさせている。そうした緊張感のなか、個々の教授には学生の多彩なニーズに応えつつ多彩な授業を行うことが要求される。具体的には、教材の工夫、学生を飽きさせない授業構成、内容の改善・改善・改善、プレゼンテーションの特訓、学生との密なコミュニケーション、自ら補講を担当することを厭わないこと、等の教授側の行動に投影されていた。これら、日本の大学ではなかなか見られない教える側の日々の努力が、教授の熱意として学生に伝わり、授業の活性化につながっている。

 コロンビア・ビジネススクールの教授法の主な特徴は、1.膨大な予習量・課題量、2.インタラクティブな授業、3.教授の裁量が大きいこと、4.落ちこぼれをつくらないシステム(補講:review sessionの充実等)、5.多彩で分かりやすい教材(教授の個性が反映されたケースブック等のオリジナル教材、現役CEOの「生ゲスト」等)、の5つにまとめられる。つまり、「やる気はあるが授業について来られない学生」を徹底してサポートするという精神が、システムとして十分に機能しているのだといえよう。

 とくに感銘を受けた教授の共通点を挙げれば、おのずと「理想の教授法」が見えてくる。それは、自分なりのスタイルを持ち自信にあふれていること、本質で勝負していること、みずからがお金を儲けていること、学生の質問への答え方が秀逸であること、実社会との接点を大切にしていることである。そして他でもなく、教授自身が教えることを楽しんでいる点は重要である。

 1年半のハードな留学生活では授業時間の貴重さを学んだ。コンサート会場と同じく、授業においても多様な人びとが集まる「場」の密度が大切だと気づいたこと、そのような「場」に自分自身がアクティブに参加しているという実感が得られたことは大きな収穫であった。

当日講演資料PDF
佐藤氏の著書「ゼロからのMBA」(新潮社のホームページへ)