名古屋大学 高等教育研究センター

第3回招聘セミナー 「高等教育の新しい潮流-カリフォルニア大学
ロサンゼルス校のケース」
ジョン・ホーキンス 氏 UCLA国際教育研究科長 1998年 12月22日(火) 10:00-11:30 名古屋大学高等教育センター 会議室


■ 講演要旨


 冷戦終結後、国防・航空産業等の縮小ないし労働力の安い他州への移動により、1990年代のカリフォルニアは経済不況に見舞われ、州の文教予算はカットされてきた。特に90年代のカリフォルニア大学(UCシステム)の予算は各校で5〜15%以上の削減を余儀なくされた。大学予算の場合、経常経費の約80%は教員給与によって占められているので、その残りで賄われる運営費は予算カットによるダメージが深刻である。こうした中で、さまざまな専門大学院(Professional School)が、マーケットのニーズに合わせて資金調達の重要戦略として作られてきた。既存組織の改編も進められ、たとえばUCLAの教育大学院(Graduate School of Education)は、現在では教育・情報科学大学院(Graduate School of Education and Information Studies)として再編されている。人事面では自主退職システム(Voluntary Retirement System)が導入され、教員人事が流動化しつつある。

 UCLAは外部資金を獲得するために、さまざまなキャンペーンを行ったり、富裕な卒業生に寄付を募ったり、さまざまな方策を講じている。UCLAの予算のうち、1973年には州からの配分予算が80%、それ以外からが20%であったのが、1990年代には州予算が20%、外部資金が80%に逆転した。さらに、新しい予算管理モデルとしてRCM (Resource Center Management:資源集中管理システム)が各学部長(Dean)のもとに導入され、より効率的な運営を義務づけられている。今や、各学部長に求められるのは総長-各学長のもとでの管理職としての強力なマネジメント能力である。学生の授業料は、各学部・学科の経済的コスト&ベネフィット状況に基づいて決定されている。法律、経営、医科などの専門大学院はおしなべて授業料は高く、伝統的な学術大学院は相対的に低い。また、研究重視型(Research-oriented)の教員と教育重視型(Teaching-oriented)の教員の双方にとって、その研究・教育アウトプットを総合的に評価できるようなシステムづくりが作られつつある。