名古屋大学 高等教育研究センター

第42回招聘セミナー ラーニングテクノロジー活用授業の普及と支援 帝京大学における取組み 渡辺 博芳 氏 帝京大学理工学部講師・ラーニングテクノロジー開発室室員 2004年 10月8日(金) 午後3時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 帝京大学のラーニングテクノロジー開発室(以下、LT開発室)は、eラーニングをベースとした授業改善を進め、これまでより一層わかりやすい授業を提供し、学生の自己学習力の育成を目的に設置されたものである。ここでラーニンングテクノロジー(LT)とは、学習活動を支援するのに特化した技術を指している。LT開発室では、eラーニンングの本質を、(1)しっかりとした授業設計と、(2)多様な学習モードの提供ととらえ、eラーニングの実践を通じた授業改善を全学的な取組として進めている。

 LTを活用した授業を推進するポイントは、学習モードの拡張にある。教室での授業の多くは、教員から学習者への知識の提供という形になりがちである。 LTを活用することで、学習者は多様な学習モードを持った教材を利用できるとともに、学習者間の相互作用、学習者と教員・TAの相互作用を可能にすることができる。

 LT開発室では、こうした実践の支援を行っているが、そこで重要な役割を果すのがLTAと呼ばれる学生補助員制度である。LTを活用した授業の推進には、教材の開発などに時間がかかる場合もあり、LT開発室のスタッフだけでは全ての支援ができない。そのため、多様な特技を持った学生を人材登録しておき、教員のニーズに応じて授業開発支援の仕事を割り当てることで、学生補助員を活用している。この制度は、教員のLT活用授業の促進とともに、LTAを経験した学生自身の学習観の移行を促進するという二つの面で興味深い。またセミナーでは、LTAにインセンティブを与え、仕事内容を適正に評価するさまざまな工夫も紹介された。

 LT開発室はLT活用授業を普及するために、以下のような活動を行っている。

  • セミナーの毎月開催:さまざまなテーマのセミナーを企画・開催している
  • 帝京大学コンテンツショーケース:実際に作成した教材を学内の教員へ公開し、他の教員が参考にしたり、教材の一部を利用できるようにしている
  • 情報発信:ウェブによる情報発信以外に、全教員へ配信するメール案内、年報やニューズレターなどの紙媒体の配布などを行っている
  • コンサルテーション:担当教員とLT開発室室員・LTAが議論しながら、実際の授業を設計し、教材の開発を進めていく活動を行っている

 LT開発室の活動のプロセスからは、理工学部の教員個人と対話しながら進めることの重要性がうかがえる。言い換えれば、LT活用授業の普及の意味を専門用語の押しつけではなく、教員が受け入れられる形で室員が語りかけていくことの重要性がうかがえると言えるだろう。