名古屋大学 高等教育研究センター

■ 2010年度 教育研修プログラム

名古屋大学国際化拠点整備事業教授法研修
「専門を英語で教える」

宮澤賢治を英語で! FD苦闘記

北海道大学大学院教授 中村三春 氏

日本文学は日本語で研究するのが普通であり、英語を苦手とする教員が多い。しかしながら、今後日本文学を英語で教える可能性もある。北海道大学では全学的な国際化の推進によって、文学部においても英語による授業に対する取り組みが行われている。そこで、「英語が苦手な日本文学教員」が英語による授業にどのように取り組んできたか、その「体験記」を話すことで、英語に苦手意識を持つ教員を勇気づけたい。

英語による授業とのかかわりは、山形大学において「宮澤賢治から村上春樹まで」を英語で教えるプログラムを担当したことが始まりである。そこでは、膨大なレクチャーノートを作成し、朗読するかたちの講義を行った。あまりにも準備が大変であること、一方的な授業になることなどを改善したいと感じていたため、転任先である北海道大学において「文学研究科向け英語による授業FD」に参加した。これがきっかけとなり、「大学教育の国際化加速プログラム」に次々と参加することとなる。

「文学研究科向け英語による授業FD」のプログラムでは、資料の効果的な利用、便利な共通配布資料(『大学教員のための教室英語表現300』)、学生役教員とのコミュニケーションの訓練、ビデオ映像による自己確認という成果を得た。次に、オランダのライデン大学教育学大学院の英語FDプログラムに参加し、資料の効果的な利用方法、クラスワークの導入、自学自習システムの併用、ブレンディッド・ラーニング等の成果を得た。

以上の集大成として、国際化加速に向けたFD発表大会(主催:北海道大学 国際化加速プログラム 国際教育連携を加速させる総合支援機能構築)である「目指せ!バイリンガル大学」においてデモレッスン「比喩を理解する 宮澤賢治を英語で!」を行った。そこでは、自作テキストを用意し、学問的な水準の確保に努めつつ双方向的な授業を実現した。

以上の経験から、日本文学を英語で教えるときの課題と解決法をまとめると以下のようになる。まず一点目は、教員の英語力の問題である。これについては、『大学教員のための教室英語表現300』等によって授業に必要な英語表現を身につけること、レクチャーノートを活用することなどで対応できる。二点目は、特に留学生が対象となる場合の、学生の理解力の問題である。これについては、「日本文学の発想の異質な部分」に留意し、呼びかけ、発問などのコミュニケーションを増やすことで対応できる。資料、クラスワーク等を活用し、自学自習の要素を確保することで、双方向的な授業にすることが重要である。日本文学の授業を受講する学生は、日本文学の教員に高い英語力を求めてはいない。たどたどしくてもやり取りを成立させることが重要である。


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