名古屋大学 高等教育研究センター

■ 2010年度 教育研修プログラム

名古屋大学国際化拠点整備事業教授法研修
「専門を英語で教える」

専門を英語で学べるカリキュラムづくり

九州大学熱帯農学研究センター 緒方一夫 氏
九州大学農学研究院講師 中村真子 氏

九州大学では、1994年に大学院生物資源環境科学府に英語による国際コースを開設以降、農学教育の特徴を踏まえて、農学国際コースの改革が進められてきた。そして、グローバル30事業に採択されたことにより改革が加速されている。農学国際コースの特徴は以下の2点にまとめられる。

第一に、申請と選抜の制度である。入学希望者は、ウェブを通してエントリーシートによるオンライン登録をすることができる。エントリーシステムによる選抜によって、入学希望者の出身国が全体として把握することができるようになり、その結果多様になっていることが明かとなった。また、農業が基幹産業である発展途上国からの留学生が多いのも農学分野の特質であるが、課程修了後は帰国し、自国の発展に寄与する場合が多い。

第二に、ブロックモジュール方式による授業である。この方式は、約3週間の間に月曜から金曜まで集中的に授業を開講する形態である。短期間で単位の取得が可能となり、それ以外の時間にフィールド調査や海外での調査などを行うことができる。さらに、滞在期間の短い海外からの招聘講師にも授業を依頼できるなどの利点がある。集中的な授業は、季節性に制限されるという農学系研究の特性にも対応を可能にする。

しかし、なお英語による授業について教員の側からも留学生の側からも解決すべき課題が指摘されている。そのため問題点を整理し対策が講じている。一つは教員の英語能力と教授法を向上させるために研修プログラムを提供し、その成果の波及に努めている。その過程で『英語による授業のためのハンドブック』を作成している。また、国内外の大学との連携による教育を進め、アジア農学国際共同教育プラットフォームを構築している。この試みは、英語による教育人材リソースを共有し、幅広いコンテンツを提供している。

今後の課題としては、大学院国際コースの日本人学生への開放がある。日本人学生の副専攻としてモジュール科目を開講することによって、日本人学生と留学生が共に学習する機会を与える。また、グローバル30事業として学部レベル国際コースも開設されるが、全学教育と専門教育の連結や4年後の進路も重要な課題である。

以上、これまでの試みから英語による教育は多くの教員にとって受け入れられるようになってきた。システム−教員−学生の3つの要素に立脚した総合的な取り組みとそのフィードバックは重要である。


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