コラム:社会人大学院でどう教えるか

 私は30代後半の助教授です。大学職員のキャリアアップを目的とした社会人大学院で教えています。一番年上の学生(50代後半の管理職)と一番年下の学生(20代)は親子のような年齢差がありました。

   このコースは従来型のアカデミックな大学院と違い、学んだことを仕事にすぐに活用できるような内容・方法が求められていると考えていました。だから、授業目標の立て方、課題の与え方、成績評価の方法などをできるだけ具体的・実践的に設計し、単元ごとに「どのような解決策・対応策が望ましいか」について検討・提案するなど問題解決型の授業づくりをめざしました。成人教育の方法論についての文献も参考にしました。

 ところが、実際に授業を進めてみると意外なことがわかりました。社会人学生は毎日が実務の連続なので、むしろ基本的な考え方や基礎知識を必要としているようです。仕事が忙しいからといって、課題を手加減してほしいとは思っていないようです。彼らの意見を聞いてみました。

 「社会人学生は実務経験が豊富な反面、基本セオリーを知らないことが多いから、とにかく基本をきちんと教えてほしい。そういう意味では実践的な知識を得たがる若い学生とは反対かもしれません。必要な課題はどんどん課してくれて構わないけど、何がポイントなのかを明確にしてほしい。お金を払った甲斐があったと思いたいですね。」

 「課題をフィードバックする機会が与えられないと、ついつい怠けてしまう。よくないことはわかっているんだけど。課題の成果を求められた方が、取り組まざるをえなくなるね。先生が年上か年下かは、気にしてないです。基礎的なことを勉強するのはとても楽しいですよ。毎日が発見の連続です。」