コラム:社会が学生に求めるもの

 「社会が大学や学生に求めるものはどのようなものだろうか。現在の日本は、経済のグローバル化にともなって世界各国との厳しい競争に直面している。そのような競争に備えて優秀な人材はますます必要となっており、その人材養成機関としての大学に対する期待が高まっている。このような状況の中で、近年の大学改革をめぐる議論でも、大学が養成すべき能力や資質が論点の一つとなっている。

 たとえば、中央教育審議会大学分科会が2004年9月に発表した「 我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」は、21世紀は新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代であるとし、それを担う人材の養成を大学に求めている。

 大学が養成する人材にもっとも注目していると思われるのは企業だろう。リクルート社の『就職白書2004』によると、企業が採用基準で重視する項目は、以下のようなものである。人格、会社への熱意、今後の可能性のベスト3にくわえて、能力適性検査の結果、大学での成績、学部・学科、語学力、知識試験の結果などが上位を占めている。白書では、学生が重視されたい項目についても調査しているが、上位を占めるのはアルバイト経験、所属クラブ・サークル、趣味・特技などである。ただし、企業はこれらをあまり重視していない。

 「知識基盤社会」云々はともかく、科学・技術が急速に進む中で、社会に出てからも通用する基礎のしっかりした知識・技能を学生に身につけさせることが、やはり大学教育の第一義的な使命というべきだろう。