コラム:学生はますます多様に

 学生がいろいろな意味で多様化している、というのは多くの教員の実感だろう。もっとも顕著に感じるのは、やはり学力面の多様化だろう。しかし、これは学生個人の問題とばかりはいえない。むしろ高校教育の多様化を積極的に進めてきた政府の施策の影響が大きい。いまや高校教育と一口に言っても、その内実はかなり多様であり、一様に論ずることは難しい。多様化といえば、かつては職業学科が主な対象だったけれども、現在は普通科に重点が移っている。たとえば、関連の施策を見ると、単位制高校、総合学科、中等教育学校などの制度的なものに加えて、スーパー・サイエンス・ハイスクール、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール、さらには学力向上フロンティアハイスクール事業などもある。

 くわえて、高校内部でのカリキュラム編成による多様化もある。文系・理系、これらの国立・私立別の系もあり、同じ高校であっても履修内容は多様である。系の分化は全体として早期化する傾向にあるため、高校の早い段階から履修内容が多様化している。荒井克弘らの研究によると、高校の教科科目の履修率にはかなりの差異がみられる。必修科目である国語氓ニ数学氓フほか、英語氓ナは100%であるが、それ以外の科目ではかなりのばらつきがある。このような高校間の多様化をさらに拡大する可能性をはらむものとして、高校の学習指導要領改訂がある。現行の学習指導要領は1999年に改訂され、2003年度から学年進行で実施されている(この下で高校教育を受けた生徒たちは、2006年度に大学に入学してくる)。

 はたして大学は学生のどのベクトルの発達に関わるべきなのでしょうか。 自分たちが学生だったころ、 対人能力やアイデンティティの形成などは大学以外のところで身につけてきたと言うかもしれませんね。 では今の大学生についてはどうでしょうか。 大学そして教員は、どこまで学生の発達にサポートすべきでしょうか。 この7つのベクトルはこういった問いを考えるときのきっかけになるのではと思います。

 大学はこうした多様化した学生を対象に教育を行うことが求められている。まずはその実態を正確に把握することが必要だろう。