コラム:「単位」制度とは何か?




 進級・卒業のためにどのような科目をどれだけ学修すべきかを定めたルールの一つに「単位制」があります。歴史的には、学年ごとに科目を指定した「学年制」、必修科目や選択科目などの区別を加えた「学科目制」、そして「単位」という学修の時間量で科目を換算可能にした「単位制」、の順に発展してきました。現在では、「単位制」が進級・卒業の基本になっていますが、教育現場では「学年制」や「学科目制」のルールもいまだ同時に機能しています。大学は純粋な「単位制」ルールだけでは運用されていません。
 授業科目に2単位とか4単位などの「単位数」が必ずセットになっているのは、この「単位制」が適用されているからですが、実はこのルールを成り立たせている「単位」という言葉が多くの人にいまだ機械的にしか理解されていません。一言で述べれば「単位」は「学修時間量の物差し」ですが、これだけでは教育現場で運用される「単位」の説明にはなっていません。
 例えば、2単位科目とか4単位科目という言い方を考えると、これを「教えるべき内容を2単位分あるいは4単位分にカットして学生に与えること」というメッセージとして読んでみます。これを日常の買い物の場面に移し替えて表現してみましょう。すると、「単位」とは、教師にとっては教育内容を時間で計り売りするときの計量器の目盛りになり、学生にとっては売られた教育内容がどの程度の時間で消化・吸収できるかの検討をつける目安になります。
 このように、「単位」とは教える側と学ぶ側の双方に関係する尺度であり、いずれか一方の立場で見るだけでは理解できないものです。また学修内容を時間量として変換・表現するときの尺度でもあり、時間量だけで捉えるのは間違った理解ということになります。
 日本では大学設置基準という省令のなかで、1単位は45時間の学修内容を標準とすると定められています。この45時間の根拠は明らかにされていませんが、この中には授業(in class)と授業外(out of class)での学修が含まれています。講義や実験・実習・実技などの授業方法によって、授業と授業外の時間配分が異なるので、授業にあてる1単位の学修時間をどう計算するかは15時間?45時間の範囲内で大学が行ってよいことになっています。
 10から15週という授業期間の幅の中で一つの授業科目を成り立たせることも大学設置基準のなかで決められていますが、2単位という授業科目がほとんどの大学で画一的に採用され運用されている現状を考えると、意味のある学修内容を学習者に保証できる「単位制」になっているのかどうか、大学自らがそろそろ本格的に評価する時期にきているように思います。
(高等教育研究センター・池田輝政)