Teaching Tips at Nagoya


授業の基本
1:コースをデザインする
2:授業が始まるまでに
3:第一回目の授業
4:日々の授業をデザインする
5:魅力ある授業を演出する
6:学生を授業に巻き込む
7:授業時間外の学習を促す
8:成績を評価する
9:自己診断から授業改善へ
10:学生の多様性に対する配慮


3:第一回目の授業


  • 初めての出会いはとても大切だ


 はじめて教壇に立ったときのことを思い出すと冷や汗が出ませんか。コースの初回の授業は、人との出会いがいつもそうであるように、不安と期待が交錯するなんとも言えない緊張感がただようものです。重要なのは、学生もその点では同じだということを忘れないことです。初回の授業はしばしば、大雑把なコースの紹介をして、シラバスを配って、成績評価について必要事項を伝えて、「それじゃ、来週からね」とばかりに早く切り上げる、ということになりがちです。ここでちょっと見方を変えて、初回の授業を、教員と学生双方の不安を取り除き(英語では"Break the Ice")、コースに対する期待を高めるための絶好の機会ととらえてみましょう。次のような工夫ができるでしょう。まず、学生と教員がそれぞれ、何を求めて初めての出会いに臨んでいるのかを整理することから始めましょう。


初日における学生の関心

(1)受講することによって、どのような知識、アイデア、スキルを獲得できるのか

 学生はとても現実的なので、目標が具体的に設定されないと、モチベーションが高まりません。目標設定が不明瞭だと、彼らに不安感を与えてしまいます。冊子になった講義要綱の情報だけでなく、毎回の授業・課題内容を指示したシラバスを配布した方がよいのはそのためです。口頭だけでなく、体系的・具体的に図示する方がより親切でしょう。

(2)クラスの雰囲気にうまく溶け込めそうか

 学生一人一人はバラバラな存在です。授業の時も、別の教室から移動する者、生協やバス停、下宿のベッドから駆けつける者など、さまざまです。また、ほとんどの学生は互いに見ず知らずで、無意識に互いを牽制しています。教師としては、彼らの緊張をほぐし、目標を同じくする「仲間」であるという意識をいかに持たせるかが重要でしょう。

(3)教師に対して基本的な信頼感を抱くことができるか

 この教師は信頼するに足る魅力的な人物か、学生は興味津々で観察しています。「この授業を仕方なく担当することになった」「厳密にはこの分野の専門家ではないのだが」「忙しくてなかなか授業の準備ができなくて」などの前置きは、「やる気がなさそうな教師」という印象を与えてしまいます。できるだけ、「この授業に一生懸命取り組みたいし、学生にも大きな関心を持っている」という態度を見せましょう。
 出欠のカウント方法や成績評価については、厳正かつ公平な姿勢を示した方がいいでしょう。特に新入生にとっては、授業が大人と大人の契約関係であるという発想は、新鮮で魅力的に感じられるでしょう。相手を一個の大人として尊重すれば、違反してペナルティを課されたとしても彼らは納得するでしょう。

(4)おもしろそうな授業だという期待を抱くことができるか

 初回の授業は事務的になりがちで、学生も緊張しているので、できるだけクラス全体がリラックスできるようなジョークを随所にちりばめたらどうでしょうか。

 教育目標が明確に設定され、参加意識を持てて、教師が魅力的で、内容は工夫されていて、かつユーモアに富んでいる、そんな授業を学生は期待しています。逆に言えば、何をやりたいのかがよく分からず、ノートをとらせるだけで、無愛想かつ単調な授業ほど敬遠されることになります。私たち教師も、学生の頃は同じようなことを考えていたのではないでしょうか。




  • 初日における教師の関心


(1)学生のレディネスを知りたい

 レディネス(readiness)とは、授業を受けるのに必要な基礎知識とスキルの習得水準のことです。学生のレディネスを事前に知っておけば、授業内容や課題を適切なレベルに設定できるので、学生にとって満足度の高い授業を提供できるようになります。反対にレディネスを無視すると、質問しても誰も手を挙げなかったり、欠席が多くなったり、試験やレポートの出来が悪くなるという弊害が現れるかもしれません。

(2)学生の関心を知りたい

 とくに年配の教師にとって、今日の学生は謎多き存在です。なぜ髪を染めるのか、なぜ携帯電話を片時も離せないのか、なぜそんなにマイペースなのか。これから授業で付き合っていく学生は、いったいどのような雰囲気の集団なのか、不安と興味は尽きません。初回の授業で彼らにいろいろな質問を投げかけてみましょう。

(3)学生と仲良くなりたい

 授業もまた、人間関係が基本です。積極的に彼らに話しかけてみませんか。せっかく大学に入ったのに、教師とコミュニケーションをとることを嫌がる学生は少ないはず。重要なのは、まず最初に打ち解ける努力を始める責任は、学生ではなく教員の側にあるということです。

コラム:私の名大デビュー




  • 初日にこれだけはやっておこう


Breaking the Ice

(1) 姿勢・話し方に気を使って、あいさつ・自己紹介しよう

 最初に教壇に立つ時は、できるだけ清潔感のある服装で、かがみがちにならないように気をつけましょう。学生のあごのあたりを見ながら(目を直視すると学生はおじけづいてしまう、という研究があります)大きな声ではっきり・ゆっくりと話して下さい。あいさつと自己紹介は、ユーモアを交えながら、笑顔で語りかけるのが良いでしょう。

(2) 意識的に学生とコミュニケートしよう
・一方的にしゃべって終わりにしない。たとえば、「一年生の人はどれくらいいますか?」あるいは「法学部の人は、文学部の人は、それじゃそれ以外の人は? 君はどの学部?」と挙手をさせる。これにより、学生をリラックスさせ、会話のきっかけをつかむと同時に、クラスの構成を知ることができます。
・より小人数のクラスでは、学生を指名して、予備知識を必要としないごく簡単な質問をしてみましょう。たとえば、「○○については高校で教わったことがあるかい?」、「このコースが終わったときに、何ができるようになっていたらよいと思う?」などなど。
・アンケートをとることもよいでしょう。この場合、「氷を割る」ことがねらいですから、持ち帰って集計するというようなおおげさなものではなく、簡単に書けて、その場で読み、フィードバックすることのできるようなものがよいでしょう。たとえば、哲学の授業なら「哲学という言葉から連想する語をひとつ書いてみよう」というものはどうでしょうか。すぐに回収し、「なるほど『小難しい学問』ねえ。確かにそうとも言えるけど…」と、いくつかの特徴的な回答にコメントしながらコースの内容紹介に役立てることもできます。
学生に対するレディネス確認の実例

(3)学生を一人の大人として扱う

 ごく小人数のセミナーではさらに、学生に「このクラスでは自分は個人として扱われるのだ」ということを自覚してもらうことが、その後のクラスの運営にとって非常に重要になってきます。たんに、名簿を読み上げて点呼をとるだけではなく、教師、学生同士が互いの名前を覚えることのできるような工夫が必要でしょう。そのためにいくつかの方法が提案されています。
名前を覚えるためのいくつかの方法

 何よりも大切なことは、こうして覚えた名前を使うことです。名前で相手を呼ぶことは、人間関係を築くための最も基本的なことがらです。大人数のクラスでは全員の名前を記憶するということは不可能ですが、可能な限り、学生の顔と名前を一致させ、名前を尋ね、意識的に学生を名前で呼ぶように努力してみましょう。学生は、自分がマスの一員としてではなく、個人として扱われることをうれしく思い、クラスに参加することに責任を感じるようになるでしょう。



  • コースの内容について適切なオリエンテーションを行う


(1) 授業の趣旨を説明する

 授業の中心となるテーマおよび趣旨について、概観してみましょう。これから始まる半年あるいは1年間の物語の予告編にもなります。全体に一貫するテーマの重要性を訴えながら、この授業を受講することによって、最終的にどのような知識、アイデア、スキルを獲得できるのか、また、授業の性質・位置付け(入門編なのか上級編なのか、概論なのか特論なのか)についても説明しましょう。重要なのは、そのテーマがおもしろく興味深いと、教員自身が思っていることを伝えることです。

(2) シラバスを配布し、授業の内容と方法を説明する(毎回の課題など)

 シラバスを配布します。1年生はおそらくシラバスを受けるとるのは初めての経験でしょう。シラバスとは何か、コースはシラバスに沿って行われること、必要な情報はすべてシラバスに書いてあるから特に課題や〆切などについてはその都度アナウンスしない、といったことを伝えます。

(3)教科書・参考文献を紹介する

 授業の主題に対して、なぜその教科書を用いることが適切なのかを説明します。学生は、利用価値の不明な教科書を購入させられることをとても嫌がります。入手する方法、学習方法についても説明を加えておきましょう。

(4)出欠・成績評価方法(試験・レポート)を説明する

 出欠・成績評価において最も重要なのは、フェアであるということです。一部の学生のルーズさ(代返・途中退室など)を見逃してしまうと、真面目な学生が損をしたと感じ、結果的に受講者全員のやる気を削いでしまいます。特に成績評価の方法は透明性が重要ですから、初回にはっきりと通知しておくべきでしょう。

(5) オフィスアワーなどの質問の受け付け方について説明する

 オフィスアワーを設けるならば、そのことを伝えます。事前にアポイントメントを要するかどうか、電子メールでの質問、電話での質問に応じるかどうかの方針を伝えます。

(6) ティーチングアシスタント(TA)を紹介し、その役割を説明する

 TAとは、授業開始の30分〜1時間前に最終打ち合わせをしておく必要があるでしょう。その上で、TAを紹介し、その役割を受講生に説明します。TA自身にも簡単な自己紹介をしてもらいましょう。



  • 学生と契約をしよう


 講義中の私語、携帯電話、途中入室、途中退室、レポート提出ルールの無視はすべての教師の悩みの種です。それと同時に講義をきちんと聴きたいという学生にとっても最大の迷惑であることを忘れてはなりません。こうした一部の学生のルール違反を放置する教員は、学生からの信頼を失いかねません。

 教室から私語を根絶する、ということはおそらく不可能でしょう。しかし、すぐにでもできることはあります。学生にこれらの行為がルール違反であることを伝えることと、自分はそれを許さないという姿勢を示すことです。これらを「常識だから」と言って学生に伝えずに放置し、我慢の限界を超えたところでいきなり爆発、というのはお互いの精神衛生によくありませんね。「常識」は伝えられなければ保存されません。

 受講のルールを伝える最もよい機会は初回の授業をおいてほかにはありません。配布するシラバスの中に、こうした受講のマナーを含む学生と教師の契約事項を書いて互いに確認しておくのもひとつの方法です。たとえば、次のような事項について、明確なルールを伝えておくことができるでしょう。

1. 学生は講義中に私語、ケータイ、途中入室、途中退室はしない
2. 教師は時間通りに授業をはじめ、時間通りに終わる
3. 資料配布のルール
4. レポート提出のルール
5. 講義時間外の指導についてのルール


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