コラム:成績評価に全学的ポリシーを




 成績評価の基準は学期末試験あるいは学期末レポート、出席状況、中間での課題提出、授業への参加度など多元的であることが奨励されています。学期末試験だけで成績判定するという伝統的なケースはいまでも少なからず見られるとは思いますが、「プロセス・パフォーマンス」(当該の授業によって身につけた知識・スキルを重視する評価の考え方)の動きもあるなかで、単一の基準に依存する成績判定の方法は妥当性と信頼性の観点からも検討を余儀なくされるでしょう。
 平成10(1998)年10月の大学審答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」のなかでは、授業目標にそった成績基準の明示と多元化が推奨されていますが、同時にGPA(Grade-Point-Average)による厳格な成績評価を各大学に求めています。
 大学審は「厳格な成績評価」の取組例として、(1)A-Dの5段階評定とそれに対応する4-0のGPAスコアの実施、(2)卒業のための最低GPA基準(例えば2.0以上)の設定、(3)GPAによる退学勧告(プロベーション)制の導入、を明示しています。この例だけから判断すれば、大学審は「厳格な」というよりは「穏当な」改革策を提起しているように見えます。
 各大学がGPAを導入すると対外的には、国内他大学との単位互換、編入学生の受入、国外大学との留学生の受入、などをより円滑に進めるための接点ができます。そして対内的には、例えば同じ授業科目を担当する複数の教師の間で不揃いの成績評価にならないような調整が容易になり、学生に対する公正さがさらに保証されやすくなるでしょう。
 またGPAは単なる成績評定の技術ではなくて、それ以上の意味をもっています。例えば米国では、授業の成果や水準を目に見える形で社会に示すインディケーターとしても活用されるようになっています。学内的にはGPAの水準についての合意が教師間で共有され、学生のアチーブメントについて経年的な変化や特徴を論議するデータとなりつつあります。
 GPAによる成績評価はこのようにいろいろな可能性をもっています。今後は各大学がそれぞれの状況に合わせた全学的に一貫性のあるGPAのシステムを工夫し、ガイドラインを作成していく努力が求められるでしょう。
(高等教育研究センター・池田輝政)