コラム:成績評価に全学的ポリシーを

 大学授業の成績評価基準は、学期末試験あるいは学期末レポート、出席状況、中間での課題提出、授業への参加度など、多元的であることが奨励されています。学期末試験だけで成績判定するという伝統的なケースも依然として見られますが、近年では「プロセス・パフォーマンス」(授業のプロセスの中で身につけた知識・スキルを重視する評価の考え方)重視の傾向の中で、単一の基準に依存する成績判定の方法は、妥当性と信頼性の観点からも検討を余儀なくされるでしょう。

  1998年の大学審議会答申は、「厳格な成績評価」の取り組み例として、(1)AからEの5段階評定とそれに対応する4から0のGPA(Grade Point Average:評定平均値)スコアの実施、(2)卒業のための最低GPA基準(たとえば2.0以上)の設定、(3)GPAによる退学勧告(プロベーション)制の導入、を明示しています。この例だけから判断すれば、大学審は「厳格な」というよりは「穏当な」改革策を提起しているように見えます。

  各大学がGPAを導入すると、対外的には国内他大学との単位互換、編入学生の受け入れ、国外大学との留学生の受け入れなどをより円滑に進めるための接点ができます。そして対内的には、たとえば同じ授業科目を担当する複数の教師の間で不ぞろいの成績評価にならないような調整が容易になり、学生に対する公正さがさらに保証されやすくなるでしょう。

  またGPAは単なる成績評定の技術ではなくて、それ以上の意味をもっています。たとえばアメリカでは、授業の成果や水準を目に見える形で社会に示すインディケーターとしても活用されるようになっています。学内的にはGPAの水準についての合意が教師間で共有され、学生のアチーブメントについて経年的な変化や特徴を論議するデータとなりつつあります。

  このように、GPAによる成績評価はいろいろな可能性をもっています。今後は各大学がそれぞれの状況に合った、全学的に一貫性のあるGPAのシステムを工夫し、ガイドラインを作成していく努力が求められるでしょう。