コラム:大学のルーツは?

 中世ヨーロッパに大学が誕生したとき、学生はアルプスを越えて、ドーバー海峡を越えて、全ヨーロッパから集まってきました。当時のヨーロッパには数多くの国・領邦が群雄割拠していましたが、学生は名高い教師の下に国境や民族・言語を越えて集まったのです。初期の大学は大学というよりも、私塾のようなものでした。講義は共通語であるラテン語で行われました。古代ギリシャ・ローマの学問や当時最先端の諸科学はアラビア語圏で継承されましたが、それは中世ヨーロッパ大学を通してラテン語に翻訳され、ヨーロッパに逆輸入されたのです。

 故郷から遠く離れ、異国の見知らぬ都市に集まった血気盛んな学生はたびたび騒動を起こし、一般市民との間で紛争が絶えませんでした。こうした学生たちが下宿代の交渉や兵役免除の要求を実現するために作った組合のことを「ウニベルシタス」といい、大学の語源となっています。また、一般市民と学生の間のトラブルは「タウンとガウン(大学生)の争い」と呼ばれました。この痕跡は、今日でもヨーロッパの大学街に行くと見つけることができます。当時の学生たちは、世俗的な立身出世を求めたわけではなく、ただ純粋に学問が好きで集まったのです。