名古屋大学 高等教育研究センター

第46回客員教授セミナー EUの高等教育改革 日本への示唆 舘 昭 氏 桜美林大学 2009年2月5日(木) 16時00分〜18時00分 東山キャンパス 文系総合館 4階 412号室

■ 講演要旨

photo01

 1998年にソルボンヌで仏独伊英4カ国の教育相が提案した欧州高等教育圏(EHEA)形成の構想は、1999年のボローニャでの、2010年までにその実現を目指す欧州29カ国による宣言となり、さらにはそれを確実にするため2年に一度の教育相会議をステップとするボローニア・プロセスへと展開した。そして今日、このプロセスにはトルコやロシアを含む46カ国が参加し、それは、欧州連合(EU)と欧州自由貿易地域(EFTA)をあわせた欧州経済圏(EEA)を越えた、拡大ヨーロッパ的存在となっている。そして、第1・第2サイクル(学士・修士)化の実現、次サイクルへのアクセスの確保、国家的資格枠組み(NFQ)の実施、EHEA質保証標準&ガイドラインの国家的実施、外部質保証システムの確立、質保障への学生関与と国際的参画の実現、ディプローマ・サプリメントの実施、リスボン認証協定の国家的実施、ECTSの実施、入学前学習の認定、ジョイント学位の認定といった具体的な施策において、国によってばらつきはあるものの、全体として大きな進展をみせている。

photo02

 このプロセスの駆動者として、当事者である46カ国だけでなく、特別メンバーとして超国家的機構である欧州連合 (EU)、さらには諮問メンバーとして国際機関である欧州評議会(CE)、ユネスコ、欧州高等教育質保障協会(ENQA)、非政府組織であるヨーロッパ大学協会(EUA)、ヨーロッパ高等教育機関協会(EURASHE)、ヨーロッパ学生組合(ESIB)、ヨーロッパ教員組合(Education International)、経営・雇用主団体(BUSINESSEUROPE)と、多彩なプレーヤーが、それぞれの立場から参画していることである。このプロセスの主導するのは各国の教育相に合議であることは間違えないが、特に2000年のリスボン戦略の宣明以来高等教育を主要政策の一つと位置づけ、エラスムス・ムンドゥス・プログラムの提供などによって関与を深めているEUの存在、そしてボローニャ宣言のもととされる1988年にヨーロッパ大学の学長がボローニアに集結して発した大学マグナカルタにあるように大学団体にも強い参画動機がみられること、またプロセス参加国と欧州評議会のメンバーとがほぼ一致することなどは注目に値する。

 日本の高等教育改革にとっては、その姿勢面では、社会にとっての高等教育の必要性の認識とアクセスへの関心、量的な拡大と質確保両立の志向、多様性の基での「調和」の達成の志向、また取組面では、多様な利害の目的に向けた調整機構の漸進的確立、当事者の主体的な参画、国際組織づくりへの主体的関与のあり方が示唆的である。

■ 開催案内

第46回客員教授セミナー

講演題目
EUの高等教育改革
――日本への示唆
講演者
舘 昭 氏 (桜美林大学)
日時
2009年2月5日(木) 16時00分〜18時00分
場所
東山キャンパス 文系総合館 4階 412号室

講演概要

 1998年のソルボンヌで4カ国の教育相の提案した欧州高等教育圏(EHEA)形成の構想は、1999年のボローニャでの、2010年までにその実現を目指す29カ国による宣言となり、さらにはそれを確実にするためのボローニア・プロセスへと展開した。そして今日、それは欧州連合(EU)を越えた48カ国が参加する拡大ヨーロッパの動きとなって存在する。ここでは、その10年の実績を吟味し、今後を展望することによって、日本の高等教育改革への示唆を考える。

  • どなたでも参加できます。
お問合せ先
夏目 達也
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

PDFファイルをご覧になるにはAdobeReaderが必要です。 AdobeReaderは、Adobe社AdobeReaderダウンロードサイトからダウンロードできます。
Get AdobeReader