名古屋大学 高等教育研究センター

第78回招聘セミナー イギリス高等教育における研究と教育の接続 ジェーン・クリートン氏 ポーツマス大学 主任講師 2009年5月1日(金)16時00分〜18時00分 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

■ 講演要旨

photo01

イギリスの高等教育機関で、研究と教育の連携が推進されるようになった背景としては、大学とポリテクニックの区分の消滅が挙げられる。 もともと、ポリテクニックは、専門職業教育のみを中心に行い、学位を与える機能をもたなかったけれども、大学との区分が消滅したことにより、全ての大学において学位を授与することが可能となった。 また、すべての機関は、研究と教育の両方の助成金を選択できるようにもなった。 研究費の配分を希望する場合は、大学の研究評価(Research Assessment Exercise)を受ける必要があるけれども、この基準には教授法の研究やテキスト作成等の教育的要素は含まれていない。 このように、研究と教育の分離が方向づけられている状況があった。

研究と教育との結びつきについては、優れた研究者たちは最先端の知識を学生に伝えることができる等の肯定的な側面がある。 他方、否定的な立場からは、有名な研究者はほとんど教育を行っていないであるとか、そもそも教育と研究の結びつきはないといった見解が出されている。 けれども、教育と研究の間に接続がないならば、すべての大学が研究を行う必要はなく、教育のみを行う大学があってもよいはずである。

なぜ、研究と教育を接続させるのだろうか。 すべての教員は、知識の伝達と生産の両方に関わるべきであるし、学生も学位論文を書くための研究スキルが必要である。 研究に関わることによって、教員と学生の双方は多くの刺激を受ける。 また、現代の知識社会において、研究指向型の教育を受けることは、学生の雇用可能性を高めるという側面ももつ。 2004年に設立された、高等教育研究フォーラムは、研究と教育の関係の調査を行っており、大学における研究と教育の関連性を重視している。 また、研究指向型教育に関する助成金としては、それほど研究中心ではない機関が研究指向型の教育環境を整備するための、研究指向型助成がある。

英国において、研究指向の学習環境は「学習者に知識の創造の理解や、その応用についての理解を与え、批判的分析の重要スキルや、証拠と情報を与えられた意思決定の尊重を促進する」(HEFCE2006)ものであると見なされている。 そのため、資金は、教員が自分の分野の発展に携わり、その発展を自分の教育と接続させることや、研究指向型教育を大学で組織的に取りいれるために使用されるべきである。

ポーツマス大学において、研究指向型教育は、小規模な取り組みに対する資金提供やプロジェクトに対する助成金の提供、優秀教員によるセミナーの開催等によって推進されている。 研究と教育をつなげるためのアプローチには、教員の研究関心に結びついた内容を学習させる方法、どのように研究するかを学習させる方法、探求に基づいた活動などによって設計されたカリキュラムを実施する方法の三つがある。 今後、研究指向型教育の研究は、学部教育のカリキュラムを考える上で主流となるであろう。

■ 開催案内

第78回招聘セミナー

講演題目
イギリス高等教育における研究と教育の接続
講演者
ジェーン・クリートン氏(ポーツマス大学 主任講師)
日時
2009年5月1日(金)16時00分〜18時00分
場所
東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

講演概要

現在イギリスの高等教育機関では、研究と教育の連携を推し進めよう という動きが盛んとなっている。研究と教育の接続には、教員が自らの 研究を教育に生かすことができるという利点がある。また学生も、教員 の研究に直接的に関わる機会をもつことで刺激を受けることができる。 イングランド高等教育財政カウンシルでは、こういった研究指向型教育 の推進に組織的な取り組みを行う機関に対して資金提供することで支援 している。

本発表ではまず、イギリスの高等教育機関で、研究指向型教育が推進 されることになった理由や背景を説明する。そして、各大学での取り組 みの現状や組織的な取り組みを進める際の課題を提示する。

  • 英語
  • 通訳はありません
お問合せ先
久保田 祐歌
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5386
案内用ポスターPDFPDF

PDFファイルをご覧になるにはAdobeReaderが必要です。 AdobeReaderは、Adobe社AdobeReaderダウンロードサイトからダウンロードできます。
Get AdobeReader