名古屋大学 高等教育研究センター

第89回招聘セミナー 大学におけるメンタリング・プログラムの
現状と可能性
渡辺 かよ子 氏 愛知淑徳大学文学部教授 2010年7月20日(火) 15:00〜17:00 東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

■ 講演要旨

メンタリングとは「成熟した年長者であるメンターと、若年のメンティとが、基本的に一対一で、継続的定期的に交流し、適切な役割モデルの提示と信頼関係の構築を通じてメンティの発達支援を目指す関係性」を表す。メンタリング・プログラムは、自然発生的なメンタリング関係を享受できない人々に対して人工的にメンタリング関係を構築・維持する仕組みを指す。

その特徴は、対人関係の素人であるボランティアのメンターとメンティとの関係性を事務局の専門家がモニタリングしている点にある。事務局の専門家は、カウンセラーやソーシャルワーカー等、教育学や心理学、社会福祉学等の基礎訓練を受けたメンタリングに関する専門家である。メンタリングに特有な技法はなく、関係性そのものが両者の生涯発達に重要な意味を持つ。そのため、メンター希望者に対するスクリーニングや、メンティやメンターの研修、あるいはメンタリング関係に何らかの問題が生じた際の対応や配慮など、良きメンタリングの継続のためには事務局の役割が大きい。

大学におけるメンタリングの有効性は、カレッジ・インパクト研究等、アメリカの1970年代以降の学生の多様化、マイノリティや女性といった非伝統的学生のための在学継続戦略や積極的差別是正策との関連から論証され、多様なプログラムが開発されてきた。今日、新人研修を含むFD、資格取得制度に組み込まれたプログラム、同窓会活動的なもの、需給変動に応じたキャリア形成を目的とするもの等、多彩である。特に、1990年代以降、理工系人材養成に向けのプログラムは、女性やマイノリティ、アカデミックなキャリアを歩むことが困難な博士課程修了者向けのキャリア発達支援等、科学技術政策の一環として重要性を増している。

日本の大学におけるメンタリング・プログラムの本格的実施に向けた課題としては、?大学や大学生にとってのメンタリング・プログラムの必要性の検討(女性や非伝統的な学生の能力発揮、大学院生の需給調整、新人研修は十全か)、?どのようなタイプのプログラムが有効かを見極めるための効果研究の活用、が挙げられる。メンタリング・プログラムが有効に機能するためには、メンターのスクリーニングやマッチングからモニタリングまでの一連のプロセスに関わり続ける事務局の役割が大きい。事務局のあり方も含め、それぞれの大学の状況に応じたプログラムの仕組みの構築、事務局に人を得ること、トップの理解と支援がとりわけ重要である。

■ 開催案内

第89回招聘セミナー

講演題目
大学におけるメンタリング・プログラムの現状と可能
講演者
渡辺 かよ子 氏
(愛知淑徳大学文学部教授)
日時
2010年7月20日(火) 15:00〜17:00
場所
東山キャンパス 文系総合館 7階 オープンホール

講演概要

メンタリングとは「成熟した年長者であるメンターと若年のメンティ(ないしはプロテジェ)とが、基本的に一対一で交流し、適切な役割モデルの提示と信頼関係の構築を通じてメンティの発達支援を目指す関係性」を意味する。メンタリング・プログラムは企業の人材育成や青少年問題等への対応として脚光を浴び、大学においても多彩なプログラムが開発されている。講演では各国の大学におけるメンタリング・プログラムの現状と成果、基礎理論を検討し、日本での本格導入に向けた可能性と留意点について論じたい。

お問合せ先
中井俊樹
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5385
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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