名古屋大学 高等教育研究センター

第57回客員教授セミナー 大学教育の改革―政策・研究の現段階 金子 元久 氏 国立大学財務・経営センター 2011年6月2日(木)16:00〜18:00 東山キャンパス 教育学部棟2階 大会議室

■ 講演要旨

経済社会のグローバル化、大学教育のユニバーサル化、さらにその中での大学入学者の意欲や学力の変化が、大学教育の質的革新を不可避の課題としている。大学は国際的に量的拡大の時代から、質的な転換の時代にはいっているのである。

それを端的にあらわすのは政策の動きである。米国においては、大学教育の質は大学間の自主的団体である適格認定(アクレディテーション)団体によって担われものとされてきた。しかし1990年代にはいって、大学教育のユニバーサル化の一方で、中退率が高まり、また授業料も上昇し続けた。その中で大学教育への投資が、どのような形で成果をあげているのかを具体的に示すことが求められるようになったのである。それに対応して、2000年代にはいって学生の学習行動についての全国的な調査が定期的に行われ、また学生の学習到達度を計測する標準テストなども開発された。

日本においては、1991年の大学設置基準改正によって、大学設置基準が大綱化され、個別大学による自己評価が義務化された。またかなりの数の大学に「大学教育センター」などの名称をもつ学内教育改革機関が作られた。さらに2000年代にはいって、大学教育GPなどの施策もとられた。しかしこれらは、それぞれが孤立した活動をおこなっており、幅の広い改革への動きを生みだしているとはいえない。

また研究の視点からみれば、従来は大学教育についての研究はその歴史あるいは理念にかかわるものが主体であった。しかしアメリカでは上記の流れの中で、学生の学習の規定要因の実証的な分析が広く行われることになった。上記の全国調査などのデータがその基盤となっている。日本においては、最近になって大規模の学生調査が行われるようになったが、まだその分析には残された課題が多い。

最も大きな日米間の重要な違いは、米国には政府と大学との間に様々な中間組織があり、それが上記のような動きを推進するうえで重要な役割を果たしている点である。伝統的に米国では各種の財団が高等教育の発展に大きな役割を果たしてきたが、大学教育の改革についても様々な試みを支援し、それが重要な影響を与えている。さらに各種の職能団体や、大学間のコンソーシアムなどが、上記の調査などの主体となる一方で、大学教員の自主的な大学教育改革運動を支えている。

日本においてもこうした中間組織が存在するが、それらの活動はまだ微弱といわねばならない。政策的にこうした中間組織を強化し、それによって各大学における教育改革活動を支援、強化していくことが、現在の課題といえるのではないだろうか。


■ 開催案内

第57回客員教授セミナー

講演題目
大学教育の改革―政策・研究の現段階
講演者
金子 元久 氏
(国立大学財務・経営センター)
日時
2011年6月2日(木)16:00〜18:00
場所
東山キャンパス 教育学部棟2階 大会議室

講演概要

高等教育のユニバーサル化、経済のグローバル化の中で、大学教育の質的改革が国際的に重要な課題になっています。それに応じて、大学教育改革にむけて様々な政策がとられ、大学教育についての研究も行われてきました。これまでどのような動きがあったのか、それはどのような成果を上げ、また今どのような課題に直面しているのか。先行して大学教育改革が問題となったアメリカの事例を参照しつつ、日本の現段階について考えます。

お問合せ先
東 望歩
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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