名古屋大学 高等教育研究センター

第100回招聘セミナー フランスにおける高等教育グローバル化と大学経営改革 サイード・ペバンディ 氏 パリ第8大学准教授 2011年7月26日(火)17:00〜19:00 東山キャンパス 文系総合館3階306号室

■ 講演要旨

フランスの大学は、ガバナンスや国との関係のあり方に関して、1968年以降何回かの大きな改革を経験している。組織的に脆弱で国に依存するという歴史的背景をもつフランスの大学にとって、それは自治獲得の過程であったとみることができる。

1968年のフォール法は、学術的文化的性格を有する公共施設という新たな法的地位を大学に与えた。この法律により、教員、研究者、職員、学外者で構成する管理評議会と研究評議会を、各大学は設置することになった。

1984年制定のサヴァリ法は、上記の2つの評議会に加えて教育・大学生活評議会の設置を規定するとともに、学長に対して従来よりも若干大きな権限を付与した。学長は、これら3つの評議会の合議により選出され、同時にこれらの評議会で議長を務めることになった。

2007年制定の「大学の自由と責任法」は、法・管理・財政に関する責任を大学に担わせることにより、裁量権の拡大を図った。大学は人的・財政的資源、不動産を管理することになり、4年間契約への署名の義務を負うことになった。この契約は、教育省と連携して改革を進めるための手段とされ、契約内容に沿って国からの補助金が大学に交付されることになった。国の意図は、この野心的な改革を通して、大学の魅力を高めこと、大学の研究活動を国際水準に高めること、大学の管理・運営を大学の責任で改善することにあった。

2007年法により、大学と国・中央省庁との関係が再定義され、資源の最適化と同時に、知識経済社会におけるフランスの地位向上が企図された。大学運営を能率的なものにしたり、新たなミッションや大学間の国際競争が提起する諸課題に直面するうえで、大学の執行部の強化や経営の改善が不可欠であると、国は考えている。

以上の大学改革は、1990年代末からの長期間にわたる改革の過程に位置づいている。「欧州高等教育圏」建設をめざして、1999年に29カ国がボローニャで署名したが、そこではよりハイアラーキカルなガバナンスを大学に導入することが盛り込まれていた。欧州高等教育圏をより調和のとれたもの、より競争力のあるもの(たとえば、研究拠点の創設)にすることを企図していた。そのときから,フランスの大学は、大学間の国際競争と新たなガバナンスという課題に直面することになった。

「西暦3000年の大学」という計画の下で、大学内および大学間の再編成を進めるとともに、教育と研究の改善を促進することになった。2008年に開始された「研究・教育拠点」(PRES)とキャンパス改善計画も、同様の目的をもっている。

このような環境の下、フランス大学はマネジメント変更が必要となっており、学長とその補佐、および管理評議会は、管理のあり方をいかに改革するかについて検討することが求められている。変化の文脈に沿ってガバナンスや成果を改善することは、大学政策の核心をなすものである。大学の裁量権拡大の政策によって、各大学はマネジメントに関する新たな課題に直面しており、その課題に対応するにはもはや旧来の手法は使えなくなっているのである。

■ 開催案内

第100回招聘セミナー

講演題目
フランスにおける高等教育グローバル化と大学経営改革
講演者
サイード・ペバンディ 氏
(パリ第8大学准教授)
日時
2011年7月26日(火)17:00〜19:00
場所
東山キャンパス 文系総合館総合館3階306号室
※日本語による通訳付き

講演概要

フランスでは、1968年に大規模な学生運動が展開された。これを受けて、政府は大学組織を大幅に見直す改革を断行した。それ以降、大学のガバナンスや自治をめぐる問題は、つねに高等教育政策の中核的な位置を占めてきた。フランスの大学は、歴史的に国による監督を受けてきたが、その管理・運営の基盤は十分とは言えず、むしろ弱いというのが実情である。しかし、近年、この点の改善をめざして連続的に改革が行われており、状況は大きく変化している。

2007年には「大学の自由と責任法」(LRU法)が制定され、これに基づいて大学改革が進められている。そこでは、「大学を魅力的にする」「大学の研究水準を国際的なものにする」「麻痺状況にあるガバナンスの現状を改善する」という目的に沿って、大学の自治を拡大する方向が追求されている。

同法は、大学の管理運営方式に大きな変化をもたらしている。とくに、学長および各大学の最高議決機関の役割と権限を強化した。国は大学の評価等に自らの役割を限定し、大学経営に直接関与することを控えている。このような変更によって、各大学のガバナンス能力だけでなく、大学固有の文化についても、いくつかの問題が提起されている。


※日本語による通訳付き

お問合せ先
豊田 哲
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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