名古屋大学 高等教育研究センター

第58回客員教授セミナー 大学教育のプロフェッショナル化 加藤 かおり 氏 新潟大学・大学教育機能開発センター准教授 2011年8月9日(火)16:00〜18:00 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

1.本セミナーの目的と構成

本セミナーは、大学教員という専門職業の活動の1つである教育(teaching)についてのプロフェッショナル化の意味や動向について話題提供を行い、わが国における課題を議論することを目的とした。話題提供の内容は具体的に、大学教育のプロフェッショナル化の背景、要件、諸外国の取り組みについてであった。


2.大学教育のプロフェッショナル化の背景、要件、諸外国の取り組み

大学教員は、中教審答申等にもあるように「高度な専門職業」とされている。しかしながら、その主な活動の1つである教育については、その専門性も明確ではなく専門的訓練もないなど実体がない。加えて昨今「第3の教育」としての高等教育の位置づけの変化が教育者としての大学教員の役割に対する期待を増幅させるとともに教育機能の多様化が教育スタッフの役割や枠組みを拡大し大学教育職という意味の不安定性をもたらしている。

一方、?教育の質の保証や向上の観点から、教員の最小限の教育力を保証することが国際的にも教育機関の責務となっていることや、同時にアカデミックな学習の維持や卓越した学習のための質の高いティーチングの開発が課題となっていることや、?その質保証の責任母体である教育担当部局の再編成の観点から、以前の講座制がもっていた仲間や後継者養成の機能に代わるプロフェッショナル集団育成の仕組みが必要となっているなど、専門職としての能力や組織の課題もプロフェッショナル化の背景となっている。

プロフェッショナル化には、専門的知識スキルや共通の価値や倫理観があること、それらを保証し発展するための訓練等の仕組みがあることが最小の要件である。これら要件について諸外国の取り組みをみると、例えばイギリスは、ティーチングの知識スキル、価値観について全英レベルの共通認識のための目安である「教育および学習支援のためのプロフェッショナルの基準枠組み(UKPSF)」を2006年に策定し、この基準枠組みに基づいた「教育プロフェッショナルの認定」を高等教育アカデミーの調整のもとに行っている。認定の方法には、?UKPSFを指標にエビデンスを用意して個人申請する方法、?UKPSFを用いて認証された所属機関提供の教育プログラムに参加し修了証明をもって申請する方法、?全英ベストティーチャー賞である全英フェローシップの受賞をもって申請する方法の3つがある。この際、認定の基本方針は、あくまで教員自身が専門職業人として自ら能力の証明を行うというものである。機関内の認定と国のとしての認定を連動させた方法で国家としての基本的な教育力の保証を担保していることがイギリスの方法の特徴といえる。この他、機関内での認定の方法として教育プログラム修了証明を用いている国にノルウェーやスウェーデンなどがあり、ティーチングポートフォリオを用いた継続的な能力証明の方法を用いている国にカナダやアメリカ、オランダなどの国がある。

■ 開催案内

第58回客員教授セミナー

講演題目
大学教育のプロフェッショナル化
講演者
加藤 かおり 氏
(新潟大学・大学教育機能開発センター准教授)
日時
2011年8月9日(火)16:00〜18:00
場所
東山キャンパス 文系総合館総合館7Fオープンホール

講演概要

わが国の大学教育職は、高度な専門職業とされているにもかかわらず、現在もなお、何をもって専門職業といえるのか確固たる証もなく曖昧模糊としている。しかしながら、高等教育を巡る社会的文脈の変遷に伴い、大学教育職もまたそのあり方を問われようとしている。本セミナーでは、同様の高等教育のグローバル化を背景に大学教育のプロフェッショナル化を進めている英国をはじめ欧州の事例を紹介しつつ、その意義や課題を考えたい。

お問合せ先
豊田 哲
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5814
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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