名古屋大学 高等教育研究センター

第112回招聘セミナー 「ケースメソッドで主体的学びを実現する」 丸山 恭司 氏 広島大学大学院教育学研究科・教授 2012年12月11日(火)16:30〜18:30 名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

■ 講演要旨

大学(院)における授業方法として、いまケースメソッドに注目が集まっている。ケースメソッドを取り入れることによって、単位の実質化が図られ、学生の主体的学びが実現すると考えられるからである。本セミナーでは、まずケースメソッドの概要を紹介し、その運用のメリットと成功のポイントを解説した。


1.ケースメソッドの概要
ケースメソッドは専門職者を養成するために開発された授業方法である。20世紀初頭にハーバード大学で確立されたとされる。ケースメソッドは、具体的なケースをめぐって話し合うことを基本とする。この点が、従来の講義型授業、すなわち、講師から学生に一方向的に知識を提供する授業と大きく異なっている。 この授業方法は、三つのステップを踏む。すなわち、?事前学習(個別読解)、?グループディスカッション、?クラスディスカッションである。学生はまず事前にケースを読み、与えられた設問の解答を準備する。ケースの理解度は通常それまでの経験に依存した限定的なものに留まる。グループディスカッションでは数人の学生と意見を交わす。自分の考えが整理され、クラスディスカッションのよい予行演習となる。講師に導かれるクラスディスカッションでは、様々な観点や考え方に触れ、多様な立場や関係を配慮できるようになる。


2. ケースメソッドを用いるメリット
ケースメソッドを用いるメリットには次のものがある。学生は、既習の知識・理論を応用的に理解すること、多様な考えを受容し自らの考えを他者に説明できること、さらに、専門職教育の場合は、専門職者としての考え方・態度・倫理感を形成できること、等である。 ケースメソッド授業が要求する学習活動により、学生は、授業外学習に時間をかけ(単位の実質化)、授業に主体的に参加する(アクティブラーニング)。授業に主体的に参加した学生は授業への満足度が高く、また学習内容の定着度も高い。そのため、大学にとっては、 学生による授業評価も成績評価も高い授業を提供していることになり、教育活動の説明責任を果たすうえでも有益である。


3.運用を成功させるための留意点
学生が発言しなければケースメソッド授業はうまくいかない。発言が出にくい理由として、学生が授業のなかで発言することに慣れていない(どう発言していいか分からない)ことや、本気で話し合うことを好まない(発言によって傷つけ合うのを恐れる)こと、また講師もディスカッション授業を受けた経験がない(その意義や導き方を知らない)ことなどが挙げられる。学生がクラスは寛容的であると認識し、反論されても礼節を保ったものであると予測できれば、批判し批判される勇気をもつことができるため、発言が出てきやすい。ケースメソッド授業を成功させるためには、そうした授業づくりへの工夫や、FDなどによる授業技術の研鑽が講師に求められる。

■ 開催案内

第112回招聘セミナー

講演題目
ケースメソッドで主体的学びを実現する
講演者
丸山 恭司 氏
(広島大学大学院教育学研究科・教授)
日時
2012年12月11日(火)16:30〜18:30
場所
名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7Fオープンホール

講演概要

「主体的学び」を可能とするアクティブラーニングの一手法として、また「単位の実質化」という点からも、いまケースメソッドが注目されています。本セミナーでは、まずケースメソッドがどのような教育方法であるのかを紹介し、学生と教育機関の双方にとっていかなる意義と可能性をもつものであるのかを解説します。さらに、本セミナーがケースメソッド導入のきっかけとなるよう、具体的な進め方や留意点を挙げて検討します。

お問合せ先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
ご参加いただける方は、事前に上記メールアドレスまでご一報いただけると助かります。会場準備の都合によるものですので、必須ではありません。
案内用ポスターPDFPDF

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