名古屋大学 高等教育研究センター

第120回招聘セミナー 教学IRの開発へのアプローチ −リサーチ・クエスチョンの重要性に焦点をあてて− 鳥居 朋子 氏 立命館大学教育開発推進機構・教授 川那部 隆司 氏 立命館大学教育開発推進機構・准教授 2013年11月22日(金)16:00〜18:00 名古屋大学 東山キャンパス 全学教育棟本館 3F C36講義室

■ 講演要旨

近年、日本の大学において教学領域に焦点をあてたIRの開発が進んでいる。ただし、データをやみくもに集めて分析したのでは、最終目的である学習・教育の改善および質の向上には結びつかない。そこには、調査設計、データ収集、分析、結果の解釈といったIRの各段階において重要な軸となるリサーチ・クエスチョンの設定という作業が前提となるのだ。リサーチ・クエスチョンとは、IRを有効に進める上での「リサーチのための問い」である。本セミナーでは講演とワークショップをおりまぜた形式により、大学の教学IRの開発に向けて、適切なリサーチ・クエスチョンの設定のあり方についての理解を深めた。

前半の講演(鳥居)では、立命館大学での実践に基づき、質保証の課題や機関の特質を考慮したリサーチ・クエスチョンの設定、それらに対応したデータ収集・分析、意味ある情報への変換、教育改善へのリンケージ等の具体的な内容が紹介された。たとえば立命館大学の場合、学生の学びは本当に「多様」なのか?、多様ならば「どのように」多様なのか?、その多様性に現在の「学習・教授の文脈は適合」しているのか?等がリサーチのための問いにあたる。これらを解明する上で、「学びの実態調査」によって集められたデータや学内に蓄積されている教務系データ等が活用される。IRの開発においては、とかく分散しがちな教職員の教育的関心を凝集するようなリサーチ・クエスチョンの開発が第一歩となる。

後半のワークショップ(川那部)では、「良いリサーチ・クエスチョン」の条件としてFIRMNESSと呼ばれる8観点(福原、2008)が紹介された。8観点とは、Feasible(実施可能性)、Interesting(おもしろさ)、Relevant(切実さ)、Measurable(測定可能性)、Novel(新奇性)、Ethical(倫理的配慮)、Structured(構造化)、Specific(明確化)である。その後、リサーチ・クエスチョンを導き出す作業が4人1グループで進められた。具体的には、「1. キーワードを選ぶ」「2. リサーチ・クエスチョンを導き出す」「3. 必要なデータを考える」「4. リサーチ・クエスチョンを評価する」「5. 共有する」の手順に沿って作業が行われた。このワークショップでは、個人の経験を起点としつつ、参加者に共通する教育的関心からリサーチ・クエスチョンを導き出すという、IRにおけるリサーチ・クエスチョン導出の一連のプロセスを経験すること、さらにリサーチ・クエスチョンの評価観点を理解することが目的とされている。IRに関する基礎的な知識や実践的な事例についての情報を得ることに加えて、ワークショップでの作業を通じて、IRにおけるリサーチ・クエスチョン導出のプロセスを一般化して理解することは、参加者が所属する各機関でIRを進める足掛かりとなることが期待される。

■ 開催案内

第120回招聘セミナー

講演題目
教学IRの開発へのアプローチ
−リサーチ・クエスチョンの重要性に焦点をあてて−
講演者
鳥居 朋子 氏
(立命館大学教育開発推進機構・教授)
川那部 隆司 氏
(立命館大学教育開発推進機構・准教授)
日時
2013年11月22日(金)16:00〜18:00
場所
名古屋大学 東山キャンパス 全学教育棟本館 3F C36講義室

講演概要

近年、日本の大学において教学領域に焦点をあてたIRの開発が進んでいる。ただし、単に手元にあるデータを分析しただけでは、最終目的である学習・教育の改善および質の向上には結びつかない。そこには、調査設計、データ収集、分析、結果の解釈といった各段階において重要な軸となるリサーチ・クエスチョンの設定という作業が前提として必要となる。本セミナーでは講演とワークショップをおりまぜた形式により、大学の教学IRの開発に向けて、適切なリサーチ・クエスチョンの設定のあり方について議論する機会としたい。

定員:40名(定員に達し次第、締め切ります)
お問合せ・申し込み先
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
Tel:052-789-5696
申込みにあたって、氏名、所属、連絡先メールアドレスを本文に記載願います。
申込み締切:11月18日(月)
案内用ポスターPDFPDF

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