名古屋大学 高等教育研究センター

第2回招聘セミナー 「オーストリアの高等教育改革」 Higher Education Reform in Austria カール・ハインツ・グルーバー 氏 ウィーン大学教授 1998年 11月10日(火) 15:00-17:00 中央図書館4階 演習室


■ 講演要旨

オーストリアの18の大学は、現在、大規模な改革の過程にある。

1)オーストリアでは、最近25年間の急激な高等教育拡大(「大衆化」)によって、学生人口は約4倍(1970年:51,000人、1998年:217,000人)に増加した。また、全ての大学は国立で、授業料は無料である。

2)オーストリアの高等教育の拡大現象は、ヨーロッパ諸国の中では最も遅く、1994年に始まった。新たな高等教育セクターである "Fachhochschul-sector"(短期高等教育セクター)は、2000年までに新たに10,000人の学生を供給することになる。このセクターの修業年限は従来の大学セクターよりも短く、内容的には商工業や情報テクノロジーにより密接なものとなっている。

3)法制面では、1993年から大学の人事・財政により大きな自治権が認められるようになった。

4)質的な面においては、大学の各学科の研究活動をピアレビュー(Peer Review)する制度が導入された。また、あらゆる講義やセミナーには、学期の終わりに学生による評価が義務づけられるようになった。

5)EUの四大国が主導した、いわゆる「ソルボンヌ宣言」によって、オーストリアのような小国は学位授与システムや修業年限などを(大国主導の)EU規格に変更せざるを得なくなった。基本的には、バチェラー学位を第一学位として導入することになるだろう。

6)1998年5月にオーストリア高等教育大臣が出した「白書」では、あらゆる高等教育機関がその存在意義やシステム、効率性について議論し、明らかにすることを要求している。こうした「合理化の試み」によって、新しい高等教育機関が生まれたり、あるいは、いくつかの既存の機関が閉鎖されることも考えられる。

参考文献(センター所蔵):
Federal Minister of Science and Transport, White Paper on Higher Educaiton in Austria, Vienna, 1998.
Federal Minister of Science and Transport, The Austrian University System, Vienna, 1998.