名古屋大学 高等教育研究センター

第14回客員教授セミナー 高等教育における組織の『規模』と『範囲』による分析 キース・モーガン氏 名古屋大学高等教育研究センター客員教授 2002年 6月 4日(火) 午後4時30分〜6時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館5階 センター会議室

■ 講演要旨

 Scale and Scope Analysisは、総費用に対する、成果の「規模効果」と、複数の成果の「相乗効果」を同時に考察できるシンプルなフレームワークである。具体的には、総費用を、複数の成果とその二乗項・交差項を含めた2次形式の線形費用関数として表す。この定式化を使用すれば、Unit Cost、Scope Effect、Scale Effectを容易に取り出すことができる。

 さて、大学の成果には、学部教育や大学院教育、研究活動など複数のものが存在する。従って、それぞれの成果と総費用を指標化できれば、先の費用関数の推定が可能となる。 ただし、こうした分析には次のような制約もある。(1)関数形からわかるように、成果の指標を増やしていくと未知パラメータが爆発的に増えてしまう。(2)そもそも成果の指標化が困難である。(3)また、成果の指標化が適切でなければならない。(4)最後に、成果の「質」といった側面をとらえるには、何らかの工夫が必要である。

 フリーディスカッションでは、次のような点について議論された。(1)成果の指標化については、行政機関によって集計された統計指標などが、必ずしも適切な代理変数とは限らない。米国では研究論文や出版書籍の数といったデータの入手が容易であり、これを研究活動の指標として用いる例が紹介された。ただし、その質を問う点で議論の余地を残している。(2)今回のセミナーは、経済領域をテーマにした初めての報告であった。大学が「成果」や「費用」といった意識を持ちながら活動していくことが重要である。