名古屋大学 高等教育研究センター

第56回招聘セミナー 大学の戦略的マネジメント 龍 慶昭 氏 城西大学教授 2006年2月20日(月) 15:00-17:00 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階オープンホール

■ 講演要旨

 戦略的マネジメント方式は、民間企業はもとより、行政組織、非営利組織など様々な組織に広く導入されてきている。講演ではこれらのカテゴリーに於ける内外のベストストプラクティスをいくつか紹介し、その成果と理由について、また戦略的マネジメントを導入しない組織の失敗事例などを通じ、戦略マネジメントの大学への導入可能性について考察を試みた。

まず、マネジメントの課題は効率とイノベーションを通じて組織を維持・発展させることであるとし、(1)管理過程と管理原則:経営機能の分析を基本として管理技法の開発に努力する、(2)意思決定:経営をめぐる諸問題について、意思決定を切り口として説明し対応を考え、何をなすべきかを決定し、これをイノベーティブに実施する、(3)環境変化と適応:内部有効性の追及から経営環境の変化に対応する外部適応性の高度化への変換、という三つの視点が必要であることを説いた。また大学の業績評価方式には事業としての財務諸表に加え、「教育・研究」をはじめとするインタンジブルな評価項目が多数有るため、固有の評価システムの導入が必要であることを指摘した。この点、アメリカの大学にはOffice of Institutional Research(OIR)が設けられ、大学の管理運営、執行、意思決定、計画機能を支援するために、大学の内部および外部の必要とされるデータを収集し、これを組織化し、分析することを任務とした専門職集団が組織されていることを紹介した。さらに(1)質的な変化の結果、量的な変化が現れる、(2)必要な指標を特定し評価項目を精査する、(3効果測定によって戦略と実際上のギャップを明確にして戦略の変更を行う、等々から数値化による効果測定が必要であり、performance indicatorを用いた管理が導入されていることについても触れた。

 次に、日本私立大学連盟における「アドミニストレーター研修」の目的と内容紹介を通じて、大学組織が持つ企業組織との差異や特殊性について再考し、さらに大学組織に見られる「社会性」の欠如、「管理原則・社会ルール」の不徹底などについても言及して、来るべく時代の大学職員像と大学に於ける戦略的マネジメントの導入可能性について考えた。また、アメリカに於ける大学のカテゴリー、ドメイン、セグメントなどについて事例を用いて紹介し、ほぼ全ての大学が戦略的マネジメント方式を導入していることを述べた。更には第三者評価をあげるためのタスク・フォースが多くの大学で密かに設けられていることも紹介した。

 最後に、営利組織と非営利組織には特徴的な相違点があるものの、組織構造および組織運営上の基本原理・原則は同じであるとし、大学は学生を「クライアント」とした教育がビジネスであり、市場メカニズムとコラボレーションを活用した民間企業の戦略マネジメントの導入が可能であるとの認識から、その理論と技法について概説した。

■ 開催案内

第56回招聘セミナー
大学の戦略的マネジメント

龍 慶昭氏
(城西大学教授)

日時:2月20日(月) 15時〜17時
会場:名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館7階オープンホール

講演概要
非営利組織の戦略的マネジメントの専門家であり、近年出版された『大学の戦略 的マネジメント』(多賀出版)の著者を招待します。日本の大学という同僚制を 重視した組織が変化する環境にどのように対応していくのかについて、戦略的マ ネジメントという視点からお話し頂きます。

言語:日本語

お問い合わせ: 中井 <nakai@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5385)

※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までに<seminar@cshe.nagoya-u.ac.jp>宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。) セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。 また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。

案内用ポスターPDF


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