名古屋大学 高等教育研究センター

第57回招聘セミナー ボローニャ宣言以後のヨーロッパ高等教育施策とフランスの大学 ティエリー・マラン氏 (Thierry Malan) フランス国民教育省総視学官 2006年3月23日(木) 15:00- 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 1998年5月、ソルボンヌ大学創設800周年を祝う記念式典の席で、国際競争激化の下でのヨーロッパの学術文化・研究の卓越性と欧州高等教育圏創設についての議論がなされた。ここでのフランス、イタリア、イギリス、ドイツの4ヶ国の教育大臣による共同宣言(ソルボンヌ宣言)、翌1999年6月のボローニャでの25ヶ国の教育大臣による宣言(ボローニャ宣言)において、学士3年、修士5年、博士8年といった共通制度(BMD、フランスではLMD制度)へと各国が足並みをそろえていくという確認がなされた。これは、各国とも高等教育制度のきわめて複雑で外部からは理解しがたく、各国間の比較も困難という状態を改めること、学位の国際的認証を行うこと、学生の流動性を高めること、雇用可能性を拡大すること等を目的としている。その後、隔年で開かれる教育大臣会議(現在45ヶ国)等で具体的な取組みが検討されることになった。これらの政策は、各国制度・政策の画一化ではなく、協調(Harmonization)を企図するものである。すなわち、制度・政策およびそれらに関する各国の基本原則を尊重しつつ、各国が共通の制度・政策に向けて歩み寄ることを目指すものである。これら一連の動きは、ソルボンヌ・ボローニャ・プロセスと呼ばれる。

 現段階では、(1)EUのエラスムス計画の欧州単位互換制度(ECTS)の採用、(2)セメスター制度(半期)の導入、(3)学位附属書の創設(学位の内実を証明するものとして、学生の学術的活動、体験・経験などの具体的な内容を詳細に記述する4-5ページからなる書類)の3点が具体的に検討されている。フランス政府は、LMDの方向に職業学位も含め統合するよう、高等教育予算のうちの経常経費(総予算の85%相当)を除くプロジェクト経費(15%)をボローニャ・プロセスに沿ったプロジェクトに優先的に資金配分し政策誘導を行い、従来の学位構造を維持・並存しつつLMD制度を導入した。また、ボローニャ・プロセスは、EUとは異なる次元ですすめられてきたが、EUが2010年までに競争力やダイナミズムある知識基盤経済の確立を目指すリスボン宣言を2000年に出して以後、EUとの間でも共同歩調がとられるようになっている。このような大きなうねりの中で、2010年に向けてのヨーロッパの高等教育の動向は注目される。

■ 開催案内

第57回招聘セミナー
「ボローニャ宣言以後のヨーロッパ高等教育施策とフランスの大学」

フランス国民教育省総視学官 ティエリー・マラン 氏 (Thierry Malan)

日時:3月23日(木)午後3時〜
場所:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

講演概要
 ヨーロッパ各国の教育大臣の共同声明としてボローニャ宣言(1999.6.19)が 出されて以後、ヨーロッパ諸国内での高等教育制度の統一化をはかる 試みが各国で実現に向けて動き始めている。これは、大学学部3年、修士2年、 博士3年で統一を図ろうとするものであるが、その導入の是非や影響をめぐり フランス国内外でいまだ激しい論争が続いている。しかし、この制度がヨーロ ッパで定着するとすれば、今後、世界的規模で各国の高等教育施策、ひいて は人的流動性や市場などに大きな影響を与えることが予想される。 従来、フランスの高等教育は、制度上、グランゼコールと大学が並列し、大学 の学位制度が他国と著しく異なることから、ヨーロッパ内での高等教育への 種々の統合化の動きに対し多くの課題を抱えてきた。そのような中で、フラン スがイニシアティブをとってまでEU圏内での大学での学位制度統一化に賛同 する方向に大きく舵をきった政治的背景は何だったのか。 今回は、フランス国民教育省総視学官ティエリー・マラン(Thierry Malan)氏に よるEU圏における高等教育のグランドデザインとそれに伴うフランス政府の対 応についての情報提供、及び日本の高等教育関係者との討論により、高等教 育改革への複眼的視点と示唆を得る場を提供したい。

言語:英語(通訳はありません)

お問い合わせ: 夏目 <natsume@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5693)

※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までに<>宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。) セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。 また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。

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