名古屋大学 高等教育研究センター

第46回招聘セミナー シラバスを核とした学習支援
および授業改善システムの提案
田中 浩朗 氏 福岡教育大学教育学部助教授 2004年 12月10日(金) 午後4時 名古屋大学東山キャンパス 教養教育院第一会議室

■ 講演要旨

 まず、私がなぜシラバスに関心を持ったかという点から話すと、そのきっかけは登録単位数の上限設定に関する議論であった。登録単位数の上限を設定することが、果たして教育の質を高めるのかという疑問を持ったからである。個人的な見解として、単位の上限設定だけでは教育の質は高まらないと考えている。そこで、教育の質を高めるための方策を調べてみると、カリキュラム、シラバス、ティーチングアシスタント、オフィスアワー、FDの推進などがあげられる。このときに教育の質を高める一つの方策としてのシラバスに注目したのである。

 では、シラバスとは何かであるが、刈谷氏によれば(1)事務連絡文書、(2)契約書、(3)学術情報ソース、(4)学習手引書という4つの役割を持ったものであると示されている。ここで重要だと思われるのは、学習手引書としてのシラバスである。すなわち、シラバスの本質は、「受講生がある授業科目の単位を取得するために、なすべき学習(1単位当たり標準45時間の学習)を、主体的に進める上で必要な情報をまとめた“学習の手引き”」と考えるべきであろう。

 シラバスに関してよく聞かれる意見に、「シラバスは授業を型にはめて、余談すらできないものにする」というものがある。しかし、シラバスは決して授業を型にはめるものでもなく、シラバス通りに授業をしさえすれば授業が改善するものでもないだろう。むしろシラバスがあるからこそ、安心して余談ができると考える方が自然であろう。

 多くの大学で見受けられるシラバスの問題点は、「授業要覧」と「シラバス」という性格の異なる2つのものを1つで済ませようとしているために、中途半端になっている点である。そこで、従来シラバスと呼んできたものに関してはその役割に沿って、授業概要(Course Description)とシラバス(Syllabus)の2つに分けることを提案する。そして、これらのオンライン化を提案する。これについて、慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部のシステムや、金沢工業大学のシステムが参考になる。

 オンライン化の具体的な提案は、次の通りである。授業概要はオンラインで学外公開し、適当な科目区分ことに一覧形式で読め、各科目のシラバスへのリンクがあることが望ましい。シラバスは原則として学内にのみ公開し、授業開始日の直前までに掲載され、随時更新できるシラバスシステムが望ましい。これらに加えて、名古屋大学高等教育研究センターのゴーイングシラバスのように、授業計画と連動した授業の記録の入力、教員から受講生への連絡事項が書ける掲示板、受講生が教員に質問やレポートを送ることができるフォーム、質疑応答や討論ができる電子会議室を備えたオンライン授業支援システムへ拡張できるとよいだろう。

 最後に、これまで授業改善を情報の面から話してきたが、人・物の面も同時に重要である。大学としては、こうした取り組みと同時に「事後シラバス検討会」などができることが望まれる。