名古屋大学 高等教育研究センター

第21回客員教授セミナー 私学からみた国立大学法人化への期待 潮木 守一 氏 桜美林大学教授/名古屋大学高等教育研究センター客員教授 2003年11月28日(金) 午後2時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール

■ 講演要旨

 国立大学と私立大学とでは、教員のおかれている立場が大きく異なる。国立大学では企画、実行、責任といった大学運営全ての側面において教官が関わらなければならないが、私立大学では経営陣、教官、職員の分業構造が成立している。さらに国立大学では様々なアイデアを実行に移そうにも、学内の調整や文科省の規制が存在し、改革を迅速にすすめられない。それに対し私立大学では自己決定権と自己責任のもとに改革を迅速にすすめることが可能である。

 そういった状況の中で来年度から国立大学は法人化を迎える。そこでは、学長のリーダーシップ、役員会を通じての大学運営、学外役員の登用、中期目標・中期計画を巡る文科省との折衝など問題とされる点が多々存在するが、重要な点は、政府を頼りとした大学運営を行う愚をおかしてはならないということである。世界的に見ても、低成長、人口の少子高齢化、を背景に先進国の高等教育費は行き詰まりを見せ、減少傾向にある。日本においても同様であり、さらに国の逼迫した財政が運営交付金の減少を招くことは容易に想像できることである。

 日本の高等教育機関を巡るこのような厳しい状況の中で、これからの国立大学は組織運営を迫られることになる。大学の内部には豊富な人材、資源が存在する。今後はそれをいかす必要性があろう。そのためにも法人化後、大学が持つ自由度のもとにどれだけ自主性を活かせるかに今後の大学の運営がかかっていると思われる。またそれは国立大学だけの問題ではなく、私立大学も共有すべき問題である。