名古屋大学 高等教育研究センター

第33回招聘セミナー 高等教育の経済学 渡邊 聡 氏 筑波大学 大学研究センター講師 2004年 2月26日(木) 午後2時 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 オープンホール

■ 講演要旨

 労働市場をマクロ的に見た場合、労働力人口が減少しているという実態は過去の統計や将来の予測からも明らかなことだろう。そうした中で、経済的な成長を続けていくには、労働生産性の向上が不可欠になる。その際に、重要な要因の一つに教育がある。ここに教育を経済学的に考える一つの視点がある。

 過去20年の労働力人口を学歴別に見ると、高卒者は横ばいなのに対し、中卒・高校中退者は一貫して減少し、高専・短大卒者と大卒者は一貫して上昇してきた。また、一見すると、労働力人口が減る中で高等教育修了者が生産性の向上に貢献してきたようにも見えるが、果たしてどうなのだろうか。

 ここでは統計資料を用いて、単純な労働者数だけで労働力を見るのではなく、労働力の質を考慮に入れた労働力というのを学歴別に見てみることにする。すると、過去20年の労働力は、高卒者はやはり横ばいであるものの、中卒・高校中退者の労働力は急激に上昇してきており、大卒者のそれはゆるやかに減少、高専・短大卒者のそれは大きく減少してきていることがわかる。

 この結果をどのようにとらえたらよいのだろうか。中卒・高校中退者の質が上がっている点については、いわゆる職人といわれる人たちの存在が大きいのではないか、高等教育への進学者の増加は必ずしも労働力の質の向上に貢献していないのではないかという解釈ができるかもしれない。特に、高専・短大卒(主に短大卒)の労働力の質が低下している点については、教育プログラムの見直しさえも示唆するかもしれない。

 こうしたデータに基づく実態の把握からも、高等教育のあり方を考える視点の一つを提供できるのではないか。