名古屋大学 高等教育研究センター

第52回招聘セミナー 大学入学生像と初年次教育の設計 山本 以和子 氏 株式会社ベネッセコーポレーション 2005年11月16日(水) 午後6時30分 名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階オープンホール

■ 講演要旨

 初年次教育を設計するにあたって、把握をしておきたいことの一つに入学してくる学生のプロフィールがあります。特に、2006年度の大学入学選抜は、「教育内容の厳選」「選択学習の幅の拡大」などのねらいのもと作成された新教育課程生が受験します。1998年度に告示されてから、指導内容の削減や週休2日制に伴う授業時間数の減少などに対する学力不安の議論はすっかり世論も巻き込みました。新教育課程生は、これまでの入学生とどう違うのか? どの変化を大学は捉えたらいいのかを解き、さらに初年次の教育活動への指針を考えてみたいと思います。

 現在、日本の初年次教育の要素は、大学生活の適応や人格に関わる「SOCIAL SKILLS」「基礎的学習スキル」「専門教育へ導入するための教育」、未履修(学校選択上)と教育課程で削減された単元を補完する「リメディアル教育」であるといえます。これらに合わせて、新しい入学生たちが、中等教育段階までに受けてきた学習と学習環境はどのようなものだったのか? 身についた学習スキルは何か? またどのような人格形成を成しているのか?を捉えます。

 現在は、中学や高校における教育改革が多数実施されています。中学までの絶対評価導入、高校入試の変化、高校の個性化・多様化により、高校卒業生の学習歴は多様になり、学力も多層化しています。また、高校の教育課程では、選択教科時間数も多いため、学校ごとに教科履修状況も異なります。さらに習熟度別授業も導入されるようになり、生徒各人において、学習歴も違います。学習スキルでも、学校によって、実施有無の違いがあることが判明しています。大学進学者が多い高校ほど、板書型の伝統的授業に依存する割合が高く、体験学習や調査学習、チームで協力して行う学習などの機会が少ない傾向があります。SOCIAL SKILLSでは、受身で安定(安全)志向などの傾向があり、総じて「ナビゲーターを求める」性質があるようです。

 初年次教育の設計のなかでは、以上のような変化をキャッチし、戦略の課題をみつけることが大切です、また同時に大学使命や目標を意識した方針もうちだす必要もあります。よりスムーズな高大接続となる初年次教育設計をめざすには、その要素を吟味し、学生の背景を的確につかむこと、そして教育活動の工夫を追求することが大切です。現在の日本では、まだその蓄積が少ないのが現実ですが、大学の不断の取り組みと検証を通じて、良い結果につながる設計ができることを願ってやみません。

■ 開催案内

第52回招聘セミナー
「大学入学生像と初年次教育の設計」

山本 以和子 氏
株式会社ベネッセコーポレーション

日時:11月16日(水) 18時30分から20時30分
場所:文系総合館7階オープンホール

お問い合わせ: 中井 <nakai@cshe.nagoya-u.ac.jp> (tel:052-789-5385)

※セミナーに出席を希望される方は、セミナー当日までに<seminar@cshe.nagoya-u.ac.jp>宛へご連絡下さい。(準備等の都合のためであり、必須ではありません。) セミナーは研究者、教育関係者、教育機関の事務担当者、学生(大学院生・研究生・学部生)、社会人など多くの方の参加を歓迎しております。 また、セミナー開催情報メールサービスも是非ご利用下さい。

案内用ポスターPDF


PDFファイルをご覧になるにはAdobeReaderが必要です。 AdobeReaderは、Adobe社AdobeReaderダウンロードサイトから ダウンロードできます。
Get AdobeReader