本号の構成

1. 授業から学ぶ

2. 本から学ぶ

・本との出会いを大切にしよう
・読書人になろう
・チェックリスト

3. 人から学ぶ
4. 学習習慣をつける
コラム
ティップスのリスト



 

2.1 本との出会いを大切にしよう

 これまでみなさんは、高校時代までにどんな本を読んできましたか。ひょっとしたら、受験参考書以外にはマンガしか読んだことがないという新入生もいるかもしれませんね。大学で学ぶということは、教科書だけに限らず「良書をたくさん読む」ということでもあります。大事なのは、大学時代に本に接する機会を増やし、良書を選ぶ目を養うことです。

 それでは、なぜ本を読むことが重要なのでしょうか。一言で表現すれば、そこには人類の叡智と苦闘が凝縮されているからです。先人がどうやって新しい知を開拓していったか、それをどうやって継承してきたか、そこにはどのような苦労があったのか、を知ることができます。本を読むということは、古今東西の偉人・先人からマンツーマンの授業を受けるようなものなのです。

  たしかに、インターネットを活用すればさまざまな情報を収集することができます。しかし、本を読むことはインターネットでは代わりができません。第一に、ディスプレイ上で長大な文章を読むのは疲れます。第二に、インターネットの情報は必ずしも精度が高いとは限りません。本の場合は編集者や出版社によって一定のチェックが入っていますので、誰もが自由に発信できるインターネット情報よりも相対的には信頼度が高いと言えるでしょう。


ティップス22:自分でお金を出して本を買おう

 まずは、自分でお金を出して本を買ってみましょう。学生の本分は学習することですから、たとえ携帯電話の通話料を節約しても、良書を購入する価値は十分にあります。その際に、どうやって本を選んだらよいのかについて紹介しましょう。

 第一の方法は、授業で教員が紹介した本を探してみるということです。数え切れないほどの本が出版されていますが、大学の教員はそれぞれの分野の専門家ですから、教員が推奨する本は内容面で一定の信頼を置けるでしょう。しかも、大学新入生にとって必要かつ適切であるという観点で選んでいるので、「ハズれる」確率は少ないはずです。
 
  最寄りの書店に立ち寄るのもいいでしょう。その場合、週刊誌が置いてある入口だけでなく、たまには店内をぐるりと回ってみましょう。ふだん自分が目にしないジャンルの本から、思わぬ知的刺激が得られるかもしれません。とくに、大学生協の書店には、大学生が読むのに適した多くの書籍がそろっています。

 インターネット書店を利用する方法もあります。インターネットで本を購入する最大のメリットは、希望の図書を簡単に検索・注文・入手できることです。この方法は、一般の書店にあまり置かれていないような専門書を購入するときには非常に便利です。もう一つのメリットは、たいていのインターネット書店のサイトにはレビュー(書評)が掲載されていることです。その本がどのくらい信頼するに足るのか、質の高い内容であるのか、他の読者の評価を参考にすることができます。


ティップス23:買えないのなら図書館に行こう

 本を買うお金がない、という人もいるかもしれません。そういう人は、附属図書館を活用するとよいでしょう。名古屋大学には280 万冊に及ぶ巨大な蔵書があります。中央図書館の他にも、学部ごとに図書室が整備され、充実した蔵書と閲覧スペースを持っています。授業の前後に立ち寄ってみるといいでしょう。中央図書館は、平日は朝8時45分から夜10時まで開館していますので、時間に気兼ねすることなく利用することができます(土日も開館しています)。大学以外にも、公共図書館はたくさんあります。県や市の図書館を利用するのもよいでしょう。

ティップス24:人がすすめる本を読もう

 良い本を選ぶにはいくつかの方法があります。良い本を選ぶための基本は、まずは人が勧める本を読んでみるということです。また、購入したい本について、できるだけ多くの情報を事前に得ることが役に立ちます。たとえば次のような方法があります。

・教員、親、先輩、友人が推薦する本
・新聞、雑誌の書評欄で紹介された本など
・インターネット書店のレビューなど
・本や論文の中で引用文献や参考文献をたどる
・執筆者の情報をみる
・出版社が出している新刊情報をみる

 噂にたがわぬ良書か、それとも期待はずれか、あなたなりの目で観察してください。手にとって開いてみてください。目次を開きましょう。良書を見抜く力は、たくさんの本を読むことによって培われます。「量が質をつくる」のです。だから、学生時代にたくさんの本を読んでください。高い本、売れている本が、必ずしも質的に優れているとは限りません。売れていなくても良い本はたくさんあるのです。


ティップス25:古典・新書を読んでみよう

 読書の習慣をつけるにはどんな本が適切なのでしょうか。大学時代には、すでに多くの人々によって高く評価されている古典を読むことをお勧めします。古典を読む意義は、「知識人として求められる幅広い教養」を身につけることにあります。東西の古典文学や哲学・歴史は、どの分野の専門家であれ、人格を形成する上で大きな指針となるでしょう。古典を知らないということは、知識人としては恥ずかしいことです。

 また、学問のそれぞれの専門分野において古典と呼ばれる研究業績・文献が数多くあるはずです。これは授業中に教員が紹介してくれるでしょうし、教員に聞けば気軽に教えてくれるでしょう。古典を読むことによって、それぞれの学問分野がどのように形成され、変遷を経てきたのかを知ることができます。先人がその学問分野を開拓するのにどれほど格闘してきたかを窺い知ることができます。

 一方、現代の「新しい知」について専門家がわかりやすく紹介してくれるのが新書です。新書は文庫本よりも少し縦長のペーパーバック(ハードカバーでない)で、ハードカバーの本と比べると値段も安く、持ち運びに便利です。マスメディアで取り上げられることも多く、大学生が現代社会の諸問題や科学技術の特定分野について初めて学ぶには格好の材料であると言えます。

コラム 大学時代に本を100 冊以上読もう 「大学時代に本を100 冊以上読もう」

 

【教員からのアドバイス】

・専門にとらわれず、まず本をたくさん読んでみる。本を読み始めたら、面白いかどうか、難しいかどうかにかかわらず、とにかく最後まで読んでみる。そのうちに、乱読して幅広く読む本と、内容を吟味しながら徹底的に読む本を判断できるようになると思う。

・高校時代に習った科目も実はさらに細分化されていて、それぞれが深く研究されており、教養書もたくさん出版されています。例えば、理科−物理−力学(電磁気学、量子力学、統計力学など)。大学に入って先輩から教えてもらった分野、こんな分野もあるのかと興味を持った分野、高校時代から興味を持っていた科目などについて、書店で気に入った本、または先輩や先生から教えてもらった本から興味を深めてみませんか。一人でも、あるいは友達
と一緒でも、まずは、気楽に始めればいいでしょう。

・授業等で興味を覚えた話に関する本を図書館で探してみる。さらにインターネットでも探してみる。さらに詳しそうな教員に尋ねてみる。

・自分の専門に関する一般啓蒙書を読んで、専門に関する興味を持続すること。

・新聞や雑誌などの記事の中に講義とかかわりある内容やキーワードを探し、社会的な知識を増やすことを習慣づける。

・講義で紹介された本を購入する。それでわからない時は自分の理解できるレベルの本を探し、当たりはずれは覚悟して本を買う。1年間に10冊以上の勉強以外の教養書などの本を読む。簡単な読書記録をつける。

・最近の新書は本人が書いていないものが多い。著名人になると、本人は口頭でしゃべっているだけで、録音した内容をあとで出版社がうまく編集しているのが読み取れる。そういう本を読むのが悪いとは言わないが、昔に比べると内容が薄くなっているのは否定できない。ちゃんと自分で書いている本かどうか、自分の目で確かめた方がよい。