名古屋大学 高等教育研究センター



2020年度名古屋大学学生論文コンテスト

学問のススメ、論文へススメ。

学生生活にスパイスは足りていますか?
授業に出る、レポートを書く、試験勉強をする、
サークルに入る、友達と遊ぶ、本を読む、アルバイトをする・・・
まだまだもの足りない人へ
学問の香りのスパイスを贈ります
――さあ、論文へススメ!


■ 2020年度審査結果

2020年度名古屋大学学生論文コンテストの審査会を、2021年2月4日(木)に開催しました。藤巻朗理事・副総長、戸田山和久教養教育院長、佐久間淳一附属図書館長、北栄輔高等教育研究センター長による厳正な審査の結果、次の論文が選出されました。

受賞論文は、本学の研究成果物として名古屋大学学術機関リポジトリに登録されます。

▼ 優秀賞

現代日本社会における「自己」の様相 : 象徴としてのマスクから
法学部 天野 大輝さん

▼ 優秀賞

主体的にさせられる生徒たち
教育学部 杉山 和希さん

▼ 優秀賞

夫婦同氏制度は憲法上男女不平等か
法学部 渋谷 大良さん

▼ 佳作

大学受験をする高校生の進学塾に対する評価とその形成要因
教育学部 藤井 香帆さん

▼ 佳作

部活動の所属と学業成績の関連性についての分析
経済学部 守内 優斗さん

▼ 受賞コメント

【天野大輝さん】優秀賞

この度は、昨年に引き続き優秀賞をいただき、誠にありがとうございます。

受賞論文における研究はコロナ禍における日々の生活から感じた問題意識から始まりました。私たちが日常生活でマスクを着用するのは、もちろん予防効果や感染拡大を阻む効果に期待しているからでもありますが、いわば他人が着けているから、あるいは自分が着けていないと白い目で見られるかもしれないからといったマスクの機能を超えたところに関心があるからではないでしょうか。このように見ればマスクの着用といったひとつの行為も、他人の「まなざし」を吸収し、それに基づいて自身の行為を規定するという、非常に社会的なものになっているのです。

なぜこんなにも他人の「まなざし」を気にするのか−そのような疑問は日本ではよく「同調圧力」という言葉で片づけられてしまいます。しかしながら重要なことに、なぜ同調圧力が生じるのか、そもそも同調圧力における「圧力」とは誰から誰に対しての何を指しているのか、その「圧力」というある種の関係性を規定する言葉を用いるのは果たして正しいのかといった、もっと大事なことには口を閉ざしがちです。

受賞論文における研究では、様々な形態があるコミュニケーションの中でも、象徴を通じたコミュニケーションである〈象徴コミュニケーション〉に注目して議論を展開しました。例えば現在のコロナ禍においては、マスクの着用は感染対策それ自体に寄与するだけでなく、「自分自身は感染対策にコミットしているという事実を表明する」という象徴機能を有しています。

前半では、その象徴コミュニケーションを深掘りすべく、象徴としてのマスクについて考察しました。象徴コミュニケーションは、言葉で直接伝えるよりも、象徴という装置を介在させるため複雑になり不確実になります(象徴コミュニケーションの不透明性)。特に私たち日本人は図らずもその装置から汲み取る意味のチャンネルを相手と共有して(ここではマスクを着用している人は社会的な感染対策にコミットしているということを二者間で相互に理解して)社会生活を営むというように、複雑な事象が生じています。そしてそれは、「行為にどのような意味付けを“されるのか”を意識する主体」が常に存在していることを意味します。この主体を(他者の視点を取り込もうとするという意味で)「分裂した自己」と位置づけ、後半では、このような主体がなぜ生じるのか、その主体が生む行為は自発的なのかといった観点に移っていき、その中で複数の大掛かりな理論装置を互いに接合して議論を展開していきました。ただ、このように理論装置を組み合わせていった意欲的な研究も、最終的には20,000字強にも及ぶ議論へと展開していきましたが、最初の身近な問題意識との整合性を高め続けたからこそ、この研究が地に足ついたものになりました。

受賞論文は、現代日本社会における「自己」の様相について、ある一定の結論を見出しましたが、この研究は、例えば現代リベラリズムが想起する、主体的に自分自身の意思に従った行為を遂行することができる「強い個人」に関する議論と関連付けるなどして、政治学的な研究に応用することができると思っています。今後はこのような観点にも着目していきながら、卒業論文につなげる研究をしていきたいです。

最後になりましたが、この論文を作る上での校閲、添削においてお世話になった友人、法学部研究者養成コースEquipMiraiの皆様、所属ゼミの教授、CSHEの職員様などすべての方々に厚く御礼申し上げ、受賞コメントとさせていただきます。


【杉山和希さん】優秀賞

このたびは拙稿に優秀賞をいただき、ありがとうございます。コンテストの存在自体は昨年度から認知していましたが、自分とは無縁のものだと思っておりました。本年度に入って授業のオンライン化に伴い空き時間が増え、また専門的な授業が増えさまざまな文献に触れる機会を得たことが、今回の執筆に繋がったように思います。

論文の主題であるアクティブラーニングという教授・学習法は、思えば「発表」や「話し合い」という形で私が小学生の頃から授業に組み込まれていました。そしてこうしたアクティブラーニング型の授業が展開される度に、(個人的にではありますが)なにか否定的な感情ばかり抱いていたように思います。この否定的な感情とは何で、それをもたらす要因は何であるか、といった疑問に答えるべく、本稿を執筆しました。

今回は文献調査に終始しましたが、アクティブラーニングの総体を詳細に検討するために今後は実証的研究にも取り組みたいと考えています。改めて、今回はありがとうございました。


【渋谷大良さん】優秀賞

この度は、拙稿に対し優秀賞という評価をいただき、誠にありがとうございます。今年度になってから、外出がはばかられるようになってしまったわけですが、そうした状況下で、自宅でできるおもしろいものはなにかないかと考えていた時に、本コンクールを思い出して論文を作成した、という次第です。正直にいうと、私の書いた論文がまさか入選するとは思っていなかったため、非常に驚いております。また、同時にとても喜ばしく思います。

私はどちらかといえば政治学に関心があると思い込んでいて、法律学に関してはなんとなく苦手意識があるのですが、夫婦同氏制度というテーマについて検討していく中で、憲法解釈が問題となっても、諦めずに何とか論じきったことについては、自分で自分を褒めたいです。

一方で、後悔している点もあります。論文の完成度を高める作業の詰めが甘かったと感じることです。たとえば、論文の作成を自分の時間の都合の中で思いつきで始めたため、もっと早くから行動していれば、より多くの文献やさらに前の判例を読むことができました。また、心のどこかで「自分がやっていて面白ければそれで十分かな」と思いながら論文を作成していたためか、書いてそのまま提出してしまいました。しかしやはり、どなたかに読んでいただいて添削をお願いするなど、客観的に意味が伝わるかを確認する行為もするべきでした。このように、「自己満足」の為に論文作成をした節があり、論文の完成度のためにもう少しできたこともあったかな、と今になると思います。

加えて、他の受賞者の方が作成された論文を拝見して、とても刺激されました。同年代の学生の方が、非常に多くの資料に当たられたり、インタビューやアンケートをされたりしたこと、緻密な、あるいは明快な文章を書かれていたことに、心が揺さぶられ、感動しました。そして、自らの勉強不足やオリジナリティの希薄さも感じました。

今回の経験を踏まえて、今後も社会問題についての自分なりの思索を続けていくとともに、それを人に伝えるということも含めて考えていく所存です。ありがとうございました。


【藤井香帆さん】佳作

この度はこのような賞に選んでいただき、ありがとうございます。自分の書いた論文を評 価していただき、大変光栄に思っております。本格的な論文を書くことは初めてだったため 最初は不安もありましたが、先生や調査対象者の方などたくさんの方々に協力していただ いてこの論文を書き上げることができました。協力していただいた全ての方々にお礼を申 し上げたいと思います。

私は今回、大学受験をする高校生が塾に対してどのような評価をしているか、そしてその 評価が何によって形成されているかについて、質的調査を用いて検討しました。私自身大学 受験の際に塾に大変お世話になり、自分にとって塾は合格するために必要不可欠なものだ ったと考えています。しかし、実際大学に入学して他の学生に聞いてみると塾に通わなかっ たという人も多く、この事実に驚いたことが今回の研究の原点になっています。今回は時間 の都合もあり十分な調査を行うことができず、また論理的な論文を書くという点において 反省点も多くありますが、こうした反省点は今後に活かしていきたいと思います。

また、今年度は同級生にもなかなか会えないというイレギュラーな状況ではありました が、その中で論文を執筆し、こうした賞をいただくという経験ができたことは、私の今後の 人生の糧になるものだと思っています。いただいたフィードバックは今後の参考にさせて いただきたいと思います。この度は本当にありがとうございました。


【守内優斗さん】佳作

この度はこのような賞をいただき、誠にありがとうございます。本論文で取り上げた部活動と学業成績の関連性は私が今まで是非調べてみたいと思っていたことであり、本コンテストはその調査を行う大変良い機会となりました。大学入学後論文の書き方など全く分からない状態でしたが基礎セミナーの先生の論文作成における丁寧なご指導や、同じ基礎セミナーの受講生からのアドバイスのおかげでなんとか論文を書き上げることが出来ました。論文作成には規模の大きいアンケート調査やその集計、分析など苦労も多くありましたが今後の学部研究等の糧になる貴重な経験となりました。この経験を無駄にせず自身のさらなる成長に繋げられるようこれからの大学生活もより一層努力していこうと思います。最後になりましたが、この文を執筆する上でアンケート調査に協力してくださった方々、論文の添削等お世話になった友人や先生方、学生論文コンテストという機会を提供してくださった名古屋大学高等教育センター及び教養教育院の方々に厚く御礼申し上げます。


▼ 事務局から

本年度の応募総数は15本、そのうち5本が入賞し、過去最高の入賞率となりました。入賞した論文はもちろん、応募論文全体の質がよかったことが、印象に残りました。とくに入賞論文は、いずれも、身近な問いやよく知られた概念を選びながら、それを学問上の問いとして焦点化することに成功していました。そして、それぞれの問いに応じて、質的調査、量的調査、先行文献調査などの手法を選び、最後までよく議論しきったものでした。

思いもよらない状況下ではじまった2020年度、学生のみなさんにとっては、学習を進めることに苦労した面もあったことと思います。そのようななかで、本コンテストに応募するという目標をもって努力を続けた応募者のみなさんには、頭が下がる思いもしています。応募にいたらずとも、準備を進めていた学生もいたかもしれません。そんな皆さんの努力が、今後のさらなる学びに結びつくことを願っています。

コロナ禍はまだ収まりそうにありませんが、本コンテストもまた次年度に開催されます。新1、2年生には、学習のビタミン剤に、また学生生活の彩りにと、ご活用いただければと思います。


2020年度の募集は締切りました。ご応募ありがとうございました。

■ 応募要項

▼論文内容

応募論文においてとりあげるテーマ/問いを明確に記述したうえで、文献等を活用して論じてください。内容領域は問いませんが、当該領域を専門としない人にも理解できるよう記述してください。(論文題目例がホームページに記載されていますので、参照してください。)

▼応募期間

2021年1月19日(火)12時まで

▼応募資格

名古屋大学に在学する学部1・2年生

▼応募規定

  • 応募論文は、単著、未発表かつ日本語で書いたものに限ります
  • 審査対象論文は1人1編のみとします
  • 次項「応募方法」に掲載されている書式に従って、論文と応募用紙それぞれの電子ファイル(PDFまたはWord)を作成・提出してください

▼ 応募方法

  1. 論文本編と応募用紙の書式電子ファイル(PDFまたはWord)を当ページからダウンロードしてください
  2. 書式に従って論文と応募用紙を作成してください
  3. 論文本編と応募用紙の電子ファイル(PDFまたはWord)を、件名「2020論文コンテスト応募(応募者名)」で、応募先メールアドレスへ期日内に送信して下さい

▼審査

本学教員による

▼表彰

数名に賞状および協賛機関からの副賞を授与

▼結果発表

  • 2021年2月を予定
  • 発表に際し、入賞者の所属学科および氏名を公表いたします
  • 入賞作品は名古屋大学学術機関リポジトリに掲載いたします

▼その他

  • 論文作成のポイントしては次の資料(PDF)を参考にしてください。
  • 論文の書き方に関する各種文献を中央図書館2階ラーニングコモンズおよび高等教育研究センター(東山キャンパス文系総合館5階)にて閲覧できます
  • 中央図書館2階サポートデスクでは、大学院生スタッフからレポートの書き方の相談を受けられます
  • 過去の入賞論文は名古屋大学学術機関リポジトリに掲載されています
  • 過去の受賞論文タイトル・テーマについては、以下のリンクから確認できます

■ 主催

名古屋大学 高等教育研究センター・教養教育院

■ 共催

名古屋大学 附属図書館

■ 協賛

コクヨマーケティング株式会社

名古屋大学消費生活協同組合

■ 問い合せ先

名古屋大学高等教育研究センター 2020年度名古屋大学学生論文コンテスト事務局

Tel:
052-789-5696
E-mail:
info@cshe.nagoya-u.ac.jp
URL:
http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/ronbun/


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