場を理解する方法

場の目的を確認しましょう。研究のアイディアを紹介することが求められている場合、プレ調査の結果を踏まえて今後の進め方が問われている場合、調査研究の最終成果を発表することが求められている場合など、様々なものがあります。その場において発表者に何がどこまで求められているかも同時に確認しましょう。いずれにしても自分の学習や研究活動のために与えられた場であることを理解し、その場(準備を含めて)において自分が何を得ようとするのか、自分にとっての意義は何かについても意識しましょう。

与えられた時間を確認しましょう。口頭発表のための時間とディスカッションの時間がまとめて提示されていることもあるので要注意です。また、他の発表者はいるのか、どのような発表をするのかについての情報も集めます。

聴衆は誰かを確認しましょう。多くの場合は授業を担当する教員とTA、そして共に授業を受ける学生たちでしょう。時には、いくつかの授業が合同で発表会を開催するとか、不特定多数の人が聴きにくる可能性があるとかいう場合もあります。聴衆の持っている前提知識や関心を踏まえて、プレゼンテーションの内容も調整する必要があります。

会場について確認しましょう。多くの場合はいつもの教室かもしれませんが、マイクの有無、プロジェクタ使用の可否など改めて情報を得ます。教壇に立って教室の大きさや声の通りを体感してみたり、スライドの文字の大きさやプロジェクタ使用時の明るさをテストしてみたりすることも、実際の状況をイメージするのに役立ちます。

発表を構成する方法

背景と目的⇨方法⇨結果と考察⇨まとめないしは問い/仮説⇨論証⇨結論(答え)という順序で構成するのが学問的なプレゼンテーション構成の基本です。この型を守ることで、互いの理解が容易になります。ただし、授業において指示があった場合にはそちらに従ってください。

各構成要素の主要メッセージを確定し、時間配分をどのようにするかを考えましょう。たとえば10分間のプレゼンテーションならば、目的と背景の説明に3分、研究方法に2分、結果と考察に4分、まとめに1分という具合です。場の趣旨に即して加減しましょう。

各要素の内容を適切な分量にまとめます。読むときのスピードと聞くときのスピードの違いに配慮しましょう。

プレゼンテーション全体の流れを確認しましょう。自分が調査研究を進めた順序と、聴いた時にわかりやすい順序とは異なることがあります。ただし基本構成は変えないようにします。

ハンドアウトやスライドの作り方《参照⇒プレゼンテーション資料をデザインする》

口頭のみで説明する部分、資料に掲載して口頭でも説明する部分、参考として資料に掲載するのみで口頭では説明しない部分を使い分けます。また、細かい情報は配付資料、図表などの視覚的情報はスライドに適しています。

シンプルに作ることを意識しましょう。発表の流れに沿って作成されていると、聴衆は迷いなくプレゼンテーションに集中できます。

ページ番号や図表番号を入れると、口頭説明との対応がつけやすくなります。

情報量を調整します。多すぎると内容の理解が伴いにくくなりますし、少なければ情報としての体をなしません。スライドは1分1枚を目安に、発表時間が長いときは枚数を減らしてじっくり説明するようにし、短ければ枚数を少し増やしても構いません。文字が小さいときにはゴシック体を使うなど、見やすさにも配慮しましょう。

不可欠な情報を欠落させないように注意します。例えば、グラフの縦軸、横軸の表す量や単位などはかならず必要です。参考文献についても正確に表示しましょう。

発表練習で確認すべきこと

時間に収まるかどうかをまず確認します。長すぎたり短すぎたりしたら、内容と時間配分の調整が必要です。本番で緊張すると早口になることが多いので、計画した時間配分にそって、時計を見ながら練習してみましょう。

ハンドアウトやスライドへの注目を促す一言を添えて、聴衆の理解を助けましょう。例えば、「ハンドアウト3ページ目の下段をご覧ください」「スライドの右側の図について説明します」などです。

パソコンの画面や手持ちの資料にばかり目を落としてしまうのではなく、会場全体を見回して聴衆の反応を確認しながら進めます。会場や聴衆に応じた声の大きさやトーンを意識してみましょう。

自分の話し方の特徴を理解するよう努めましょう。間の取り方、視線の向け方、表情や姿勢、身振りが与える印象などを意識します。練習の様子を録画、録音してみると、客観的に把握する助けになります。仲間と一緒に練習し、互いに批評するのも有効です。

想定問答について

自分の発表内容に対して批判的思考《参照⇒議論する》を適用し、質問を考え、回答を用意します。正確な定義や他の理論等との関係を聞かれることもあれば、具体例を用いた説明を求められることもあるでしょう。このように想定問答を考えるなかで、発表内容も同時に改善してみましょう。

時間的制約のために割愛せざるを得なかった部分については、端的な説明を用意しておきます。参考となる関連資料やデータも手元に準備しておきましょう。

発表にわかりにくい部分がないか、仲間と一緒に確認しておくとよいでしょう。

推薦文献
佐藤望編著(2006)『アカデミック・スキルズ 大学生のための知的技法入門』第2版、慶應義塾出版会.
発行|
名古屋大学教養教育院 & 高等教育研究センター
初版|
2018.3.20
作成|
齋藤 芳子