発表の準備

よい発表を行うためには、計画、準備が重要です。発表をどのように行うのがよいのかを考えるために、基礎情報である、発表の聞き手、場所、時間を確認しましょう《参照⇒効果的なプレゼンテーションを準備する》

基礎情報を確認したら、まず何を調べるのかを決めて、資料を収集し、クリティカル・リーディングを行いつつ、自分の発表内容を考えます《参照⇒クリティカル・リーディングを行う》。発表内容を考えると同時に、どのように発表すれば効果的なのかも考えなければいけません。自分が最も発表で言いたいことは何なのかだけでなく、それをどのように発表すれば、聞き手に最も伝わりやすいのかを考えてみてください。発表に資料(配布資料、スライド)を用いる場合は、事前にそれらを作成します《参照⇒プレゼンテーション資料を作る》

発表は誰でも緊張したり、慌てたりしてしまうため、事前に本番を想定して何回か発表練習しておくとよいです。大学中央図書館にはラーニングポッド(3F)やディスカバリスクエア(2F)をはじめ、プロジェクタの設置されたグループでの発表練習に適した場所があります。詳細な情報は、図書館のウェブサイトから確認できます(https://lc.nul.nagoya-u.ac.jp/howto/)。

効果的な話し方を用いて、発表を行う

発表では、声の大きさ、スピード、トーンを調整しながら話す必要があります。まず、大きすぎず、小さすぎず、聞き手全員に適切に聞こえる大きさの声で話しましょう。次に、話すスピードですが、緊張のあまり早くなることが多いため、少しゆっくり目に話すくらいでちょうどよいです。また、重要な点や強調したい点については、トーンを変えて、強調しているということが聞き手に伝わるように話してください。資料を用いる場合、どうしても単調に資料を読み上げてしまいがちですが、聞き手に自分の発表を伝えることを常に意識してください《参照⇒効果的なプレゼンテーションを準備する》

発表を能動的に聞く

発表と議論は共同で学術的調査を進めるための重要な方法です。そのため、自分が発表者の調査に協力するという意識をもち、能動的に発表を聞く必要があります。まず、事前に発表資料が配布される場合は、読んだ上で発表を聞きましょう。発表では、発表者の話し方に注意を払い、強調点を確認するようにしてください。視線を交わす、同意できる点には首を縦に振るなどして、聞き手も発表に参加しているという態度を発表者に伝えると、発表者はより円滑に発表しやすくなります。

発表を聞きながら、自分の理解や不明な点をメモし、その後の議論に備えてください。自分の見解や価値観と異なる内容を発表者が述べるときは、自分にバイアス《参照⇒クリティカル・リーディングを行う》があるかもしれないという可能性に注意しつつ、発表者がどのような理由、証拠でそれを述べているのかを確認してください。

質問をする・質問に答える

質問し、議論する目的は、発表された事柄についての自分の理解を増やすことと、発表された事柄についての調査・研究に貢献し、それについての合理的な見解に到達することです。これらの目的に則さない、発表者の社会的属性、人格や能力を問題にするような質問、自分の見解と異なるという以外に理由を示さないような批判的質問は、不適切な質問です。

質問は難しいものである必要はありません。自分がわからないと感じた点、もう少し知りたい点があるならば、発表者にもう少し詳しく説明してもらうようにたずねるだけでも十分です。また、発表者と異なる見解を持っている場合、自分がなぜそう考えるのかという理由を示してから、発表者にどう考えるのかを質問するようにしましょう。簡単にどちらが正しいのかを決めることができる事柄はほとんどありません。議論において大切なのは、ある見解についてそれを支持する理由と支持しない理由の両方を考慮して、どの程度その見解を支持する(しない)ことが合理的なのか合意を築くことです。

質問を受けたらまず、質問内容を十分に理解できたかどうかを確認しましょう(後で振り返りやすいように、メモをとるのもよいです)。もし理解できていないと感じるならば、もう一度質問を繰り返してもらいましょう。答えるのが難しい質問には、どこまで自分が答えることができて、どこからは答えることができないのかを述べればよいです。質疑応答は、自分の見解について他の人と共同で検討し、自分の見解をさらに支持する理由を見つけたり、それを支持する理由が思ったよりも弱いものだったと気づいたりするための機会です。自分の見解だけに固執することなく、いろいろな見解とその根拠を聞いてみてください。

発表を振り返る

発表の後に、発表資料の作り方、発表の仕方、質問への答え方の3点について、再検討してみましょう。大学生活で発表することは何度もありますので、きちんと振り返っておけば、次回にはさらに優れた発表ができるはずです。

推薦文献
T.W.クルーシアス・C.E.チャンネル著、杉野俊子ほか訳(2004)『大学で学ぶ議論の技法』慶應義塾出版会.
発行|
名古屋大学教養教育院 & 高等教育研究センター
初版|
2018.3.20
最終改訂|
2019.3.1
作成|
笠木 雅史